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ページ番号757番
★ 可哀相な夫(あしながおじさん) ★ 新妻K子 (東京都) 2010-06-30
突然Aさんから電話があったのは6月25日でした。
「K子ちゃん、わたしだ。Aだ」 「あ、Aさん・・・、ご無沙汰しています。お元気そうですね」 「まぁ、カラ元気だ。それよりもおめでとう。ご主人から聞いたよ。お祝いを言いたくて電話した」 「ありがとうございます。ちょっと早すぎたので私たちも慌てているんですよ」 「そうか、そう云う慌ただしさは何度あっても歓迎だろう・・・なによりだよ」とAさんは笑います。 夫が政府の代表的海外機関への出向が決まったのです。期間は二年間なのですが入省年次からすると一年早いそうです。 「おかげ様で・・・Aさんのお力添えがあったのかしら」と探りを入れると 「そんなことはない。ご主人の実力だ」とキッパリ断言します。 「父も俺の見立てに狂いはなかったと大層な喜びようで、お祝いをするから直ぐ帰れ、なんて無理難題を・・・」 「それはそうだよ。自慢の婿殿なんだよ・・・、で、そのお祝いなのだが・・・」 「Aさん、そんなことご心配に及びません」と言葉をさえぎると 「K子ちゃんとワシの仲だ。そうもいかんだろう」とつぶやきます。 Aさんは餞別としてあのカードを使ってくれと言います。旅立ちの装いをあのカードでまかなってくれというのです。そして成田まで見送りに行くというのです。 「でも、便り(請求書)が届く頃には日本にはいませんよ」と笑うと 「いいんだ、そんなもの空手形になっても・・・、ただ頼みがひとつあるんだよ」となにか思いつめた様子のAさん。 「なんだか聞くのがコワイわぁー」と嬌声をあげる私。 「実はK子ちゃんの絵を描かせてもらいたと思ってさぁ」 「エ・エー、わたしの、ですかぁー」 わたしはAさんが絵を描く趣味があることは知りません。そんな私の戸惑いを感じ取ったのか「絵の趣味はあるが、描くのは画家のタマゴだ。芸大の学生だ。安心してくれ」といいます。 「わたしがモデルですか・・・」と確認するとそうだという。 中三のとき友人に頼まれて写真のモデルになったことがあります。彼女と撮ったスナップ写真がたまたま彼女の兄Yさん(大学生)の目にふれ、彼女を介して頼まれたのです。 三人は郊外にピクニック気分で出かけます。彼女は折りたたみの反射板を手にYさんの指示に従っています。十数枚立て続けに撮り終えると 「K子ちゃん、いいね。ポーズも表情も自然で・・・」と私を労ってくれるYさんに好感が持てました。次の場所へ移動中、前を行く彼女に聞こえないような声で 「K子ちゃん今日だけ僕の恋人になってくれるとありがたいな。いい写真がとれるからね」と囁きます。 兄のいないわたしはYさんにこう云われるとすっかり暗示にかかりYさんが無二の恋人に思えて、現実に戻るとき非常につらい思いをしました。余人には聞き取れないレンズを通して私とYさんの会話。私はシャッターが切られるタイミングをピタリと当てることができました。表情を出すためにYさんとのキスシーンを頭に思い浮かべると、間髪を置かずバシャ、バシャと数枚連写されます。素人モデルでも自分が何かを相手に与えていることがわかるのです。 Aさんの突然の申し出に8年前の甘酸っぱい思い出よみがえり「素人のわたしが絵のモデルですか・・・」と思わず聞き返してしまいました。 「そうだ。君のあの時の絵が欲しんだよ」と笑います。 私はあの時という言い回しに若干不安を覚え 「あの時とはどの時でしょうか」と訊いてしまいました。断るならこんなことを訊かなければいいのですが、今思うと興味があったのでしょうね。 「ホラ、写真を撮ろうかと言った・・・あの場面だよ」 あれは5月4日にAさんと密会中にドアがノックされ、Aさんがドアに向かったあと私は何事かとベッドから身を起こすと横座りになって聞き耳を立てています。すぐ「あそこに置いてくれ」という声がして私はびっくりしますが、もうことここに至ってはと開き直り、体の力を抜いて上半身を晒したままボーイを目で追ったのです。 ブランデーを持って来たボーイが去った後、私の姿態と表情がAさんを惹きつけようで、携帯で写真を撮ろうかといわれますが断ったのです。 「ということは、同じ部屋で同じ格好で、ですか?」とついつい訊いてしまいます。 「そうだ、あの時のK子を絵にとどめておきたいんだよ」 「じゃあ、その学生さんにわたしの胸を長時間見せてもいいのですね」と私がからかうと 「ただの学生じゃないぞ! 指折りの有望株だ。ダイヤモンドにはダイヤモンドだよ」と鼻息の荒いAさん。 私がその絵をどうするのか訊ねるとその学生に描かせ、画商を通して買い取るそうです。そしてその絵はAさんの寝室にかけるといいます。 「大丈夫なのですか・・・奥様の方は?」 「なに、画廊に一緒に行くから、私の衝動買いには慣れているんだ。雰囲気が若いときのお前に似ているなんて言えば・・・実際似ているんだよ」 ここまで聞いた以上私も断るわけにいかず、私の都合の良い日程を伝えるとあとで連絡をするとからと言って電話は切れました。 約束の日、私は件のジーパンを手提げバックに入れてホテルへ。 ロビーでAさんから画学生のSさんを紹介されます。 グリルで昼食をとりながら簡単な打ち合わせをしました。私は食事中Sさんが私とAさんの関係をどう思っているのか考えていました。AさんはSさんの前では私をTさんと姓で呼びます。いずれにしても絵の依頼主が重役風の男性。ご指名のモデルが若い女性。舞台がご指名のホテルのダブルベット。これだけ状況証拠が揃えば、感受性が鋭い画学生には二人の関係はミエミエなのにAさんの取り繕う様がおかしく思えます。 「S君、なにか他にあるかな・・・」 「そうですね・・・Tさんの髪を下ろした方が絵として柔らさが出ますね」 「なるほど、さすがだな・・・シャープ過ぎるか・・・じゃあそうしよう」と 私の意見も聞かず決めてしまうAさん。 チェックインタイムの2時にあの部屋に入ります。カーテンを開けるとあの夜とは違った雰囲気なります。Aさんは上掛けを取り払うとSさんにここが今日の舞台だといいます。 「思ったよりいい環境ですね。直射日光が入らないから影が安定して・・・ちょっと上がってもらえますか」とSさんに言われ私はベッドに上がります。 そしてあの夜のような姿態を作るとAさんは無言で頷いています。 「いいですねぇー、シーツから光が顔に回って最高ですよ・・・」とSさん独り言のようにつぶやき 「Aさん、このままでも一枚の絵になりますよ」と感心しています。 白のカッターシャツに水玉柄のトルコブルーのフレーアースカートという格好なのですが、褒められるとこのベッドで繰り広げられたAさんとの物語りが思い出されて、なんだか気恥ずかしくなり、Sさんから視線を逸らしAさんを見つめてしまいます。 「まぁ、時間もないことだし・・・S君、予定通り頼むよ。私はここで失礼するから」 「分かりました。ご期待に沿えるよう全力を尽くします」 「Tさん、終わったら連絡ください」と言ってAさんは部屋を出ていきました。Sさんは床にビニールシートを敷くとイーゼルを置く場所をあれこれ思案しています。位置が決まるとお願いしますと言われ私はベッドから降ります。 後ろ向きになってパンストを脱ぎジーパンを穿くとスカートを外してから髪をまとめあげているリボンを解きます。そして化粧ポーチを持って洗面所で行こうとすると 「Tさん、髪にブラシを入れないでくださいね」と、背後から声を掛けられました。この一言を耳にしてわたしは不思議な感慨に襲われます。夫さえわたしの髪について差し出がましいことは言ったことはないのに、わたしよりも二歳も年下の彼が会ったばかりの私に自分の趣向を主張している。 Aさんもそうですが、Sさんも私に対して髪を下ろした方がいいとか自己主張が強く、私にいつも控えめな夫が踏み躙られているようで不思議な感覚がするのです。 化粧を直してベッドに上がり膝を崩し横座りになると、シャツのボタンを外しながら 「Sさん、わたしこういうこと初めてですのでよろしくお願いします」と挨拶しました。 「私も一対一で裸婦を描くのは初めてですから・・・」とSさんは笑います。 シャツを脱いで決められたポーズをとると、 「いいですねぇー、それでいきましょう・・・20分で休憩入れますから」と いうと鉛筆を立てたり寝かしたりしながら絵の構図を決めていました。 最初の20分が終わるとモデルをするのは本当に初めてですかと笑いながら訊いてきます。 私がどうして?と訊くと、まぁなんとなくとはぐらかします。わたしはどうしてそう思うのか知りたくて 「Sさん、わたしのことK子と呼んでください。あなたと私は絵が完成するまで師弟関係ですから・・・」 「・・・?」 「あなたが映画監督でわたしが女優といえば分かりやすいかしら・・・で、監督さんどうしてそう思ったの」 と問い詰めると、はにかみながら 「K子さん、ブラジャーをしていなかったし、肌が綺麗で色も白いし・・・、表情もいいし、その上・・・」と言い淀んでいます。その上どうしたんですかと突っ込むと 「乳房がミロのビーナスみたいなんです。乳首も立っているし・・・」と最高にわたしを持ち上げてくれます。 Sさんの話によれば、同じ画学生の女性にモデルになってもらったとき、ブラジャーをした跡が肩や胸に残っているし、乳首は窪んでいたそうです。私はSさんを少しからかってあげました。 「いろいろ褒めてくださったけど、私が一番うれしかったのはなんだと思います」 「・・・?」 「それはね・・・表情がいいということと、乳首が立っているということ・・・どうしてだかお分かりになる?」 「うーん・・・」と思わずうなるSさん。 「それはね、わたしがあなたに恋をしているからよ」と言って、中三の時友人の兄Yさんに言われたモデルの心構えを話してあげました。 正直にいえば、乳首の件はノーブラで目の粗いカッターシャツを着たためか擦れてすごく敏感になってはいましたね。でもSさんを8年前のYさんに見立てて擬似恋愛をしていたのは本当ですよ(笑)。 こうしてSさんとの見えない心の壁みたいなものが取り除かれました。仕事は順調のようで四時にデッサンが終わり、五時半に終了した時は彩色もかなり進んでいたようです。Sさんは明日の8時にホテルに来てチェックアウトタイムの12時までに絵を仕上げる予定です。 Sさんが帰ったあと着替えてからAさんに電話をすると地下の天一へ来いと云われ夕食をご馳走になります。明日に備えて十分睡眠をとりたいので早く帰してしてもらおうと思っていましたが、食事のあと混みあったエレベーターの中でコンドームを握らされ彼の意思を知ることになりました。これってルール違反なのですが、二年間も会えなくなるし、カードは使わせてもらうつもりなので、OKのつもりで手を握り返すとAさんは知らん振りしています。部屋キーイを差しみドアを開けると私を抱き上げベッドまで運び私を下ろします。 「今日は二回分用意してきたのね。でも、明日もあるから今日は早く帰してね」と、その一つを返すと 「明日もあるか・・・それはいいね」と 自分勝手な解釈をしながら私のシャツのボタンを外しにかかるAさん。 「歯だけでも磨かせて」と云う私は無視され、Aさんがシャツを開き乳首を軽く口に含みスカートの中に手を差し入れくると、腰を浮かし協力する私。 無防備された私はAさんの太い親指の侵入を感じながら乳房を愛撫されるともう自分を失ってしまいます。 終わったあとわたしの余韻が遠ざかると、Aさんは 「K子、ちゃんとイケタね・・・、男は女性のイク姿を見たいからセックスするんだよ」と満足そうに言うと私の脇に横になります。私は上掛けを腰まで引いて二人の下半身を覆うと、思い切って訊いてみました。 「シャワーを使わせないで、ご自分で私を裸にするAさんの趣向はこの前聞いたから理解できるのよ」 「姫竹の皮を一枚一枚むくのが好きでね。白い身をそのまま口にするんだ。洗えば味は落ちるよ」 「でも、なぜ最初にキスをしてくれないの・・・初めて会った日も前回もそうだったけど・・・」 「だって、そんなことをしたら高価な口紅が落ちちゃうだろう。もったいないよ」 「変な所に気を遣うのね」 「ほら、そうすればご主人が君にプレゼントとしたシャネルのリップスティックがK子の唇を経由して僕のスティックに転写され、最終的にはK子の下唇を彩るわけだよ」 「下唇・・・?」と言っている意味が分からないでいるとAさんは 「ここだよ」と手を伸ばし私のそこに指を当てます。 初めてAさんの意図というか性癖みたいなものが漠然と理解できた私は思わず下唇を噛む と彼をにらみ 「もう、イヤラシイんだから・・・」といいその分厚い胸を両手で何度も叩きますが顔はもう笑っています。 そのAさんは叩かれてもニヤニヤしているだけで、私を引き寄せると 「口紅の落ちたスッピンの唇が愛おしいんだよ」と云うと私の下唇を深く吸い込むのです。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ まどろみ(微睡)から覚めシャワーを浴びてからバスローブ姿で床に放置されている二人に着衣をハンガーに掛けるとソファーに腰を下ろし、Aさんが用意してくれたビールで喉を潤します。 「ビールが美味しいわぁー」と思わず声をあげると 「そうだろう。あれだけ水分が出れば当たり前だよ」とベッドを指してAさんは笑います。 「もう、意地悪なんだから・・・ダメと言ってもきかないんだから・・・スカートが濡れちゃったのよ」 「ボーイを呼ぼうか? ランドリーサービスに出せば直ぐ元通りになるけど」とマジ顔でいうAさん。 「恥ずかしいからドライヤーで乾かすからご心配なく」と言ってやりました。 Aさんは大人気がなかった、スマンと素直に謝ると私の矛先をかわすように何故私の絵が欲しくなったと思うかと訊いてきました。私が考えあぐねていると次のように言います。 「K子、人にはそれぞれ人生がある。君との出会いもひとつの人生なんだ。偶然だか必然だか神が与えた。今のK子を絵に残しておきたい。母親になる前の君の美しい胸を・・・」 わたしはそう云われると照れくさくなって 「Aさんって、やることは結構きついのにロマンチストなのね」とからかうと 「25歳も若い君には僕の気持ちは理解できない。お母さんなら分かってくれるはずだよ」と云います。 「じゃあ、次は母を抱くのね・・・、口紅を塗った方がいいかしら、スカートは穿くの・・・髪は?」と前回のことを想い浮かべながらAさんに言いました。 Aさんはそれには答えず私をソファーに押し倒してから口移しにビールをゆっくり時間をかけて飲ませます。右手の愛撫に思わずゴックン・ゴックンと喉を鳴らしてしまう私。今考えるとあれだけ時間がかかったのはビールとはいえ半分はAさんの唾液だったのかも知れませんね。 前回はブランデーを飲まされたのですが、もう二人の間では口移しは儀式になりつつある行為なのです。今回はコンドームがあるのであっちの方は避けられそうかなと思ったりしていました。そしてAさんは私を解放すると 「K子のお母さんじゃなくて、十代の君を抱きたい」と言い出すのです。 「十代って四年前のわたしを、ですか・・・」と目を丸くして見せると 「四年前だかなんだか分からんが、アルバムで見たポートレートのK子を抱きたい・・・」というのです。 ポートレートと聞いて中三のとき友人の兄で大学生のYさんに撮ってもらった写真に間違いないと思います。 「どんな写真なの?」 「ホラ、橋の欄干に寄りかかって寂しそうな顔をしている・・・」 こう言われて私はピーンと来ました。撮ったYさんが一番気に入っていた大人びた私。Yさんも持っているオフホワイトの半袖のカシミヤのセーターで胸の陰影を強調した写真。 「あれは高二の時よ」と思わず二つサバを呼んでしまう私。 「高二かよ! てっきり大学生だと思ったよ」と驚くAさん。 「私って体つきも服装もおませだったの・・・、17才と関係を持つと縄付きなっちゃうわよ」と彼をからかいますが、本音は母の身代わりとして抱かれることを覚悟していただけに、なんとなく嬉しいのです。 着衣をすべて身に付け靴を履いてバスルームに行きます。高校生を意識してスカートの裾を膝まで上げ、化粧を直し、カチューシャの代用としてスカーフを髪に巻いて、ヘヤーリボンをネクタイにして現れると 「オー、マイ、ゴット!」と驚くAさんは私を抱き寄せると優しくキスをしてきます。Yさんによって初めて経験したキスを思い出しながら処女のように身を固くしている私。 Aさんは私を抱き上げベッドに運ぶとシーツの濡れていない部分に降ろし 「いくらミッション系だからといっても高二のとき好きな男性はいただろう」と私を見下ろして言います。 「・・・」 「今日はその男に抱かれている自分をイメージして」と注文を付けるAさん。 「あなたはどんなイメージなの」とAさんのことを“あなた”と呼んでしまう私は処女を失った新婚初夜のことが頭にあったのでしょうね。高二のとき2年前写真を撮ってくれた大学4年生になっているYさんと東京で再会したシーンを思い浮かべます。 「僕はこの年だから若い芸妓さんを水揚げするシーンかな・・・」 「ミズアゲ?・・・」 「男を知らない花街の芸妓さんをお金積んで女にしてあげること。男にとってそれは名誉なことなんだよ」 「わたしは処女ではないのに?」とAさんをからかうと 「聖母マリアが処女で受胎したなんていう伝説もあるが、実は君は処女同然だったの!」 と断言して 「だからご主人が私に君の水揚げを頼んだのさ・・・、世界が一変したでしょう」と笑います。 自信を持って言われると、これも水揚げ作業の一環なのだと納得してしまう自分が居て 「でもいくら水揚げだからといって、Aさんのポンプでわたしの水をもう汲み揚げないでね・・・、スカートのここが湿っていて気持ち悪いの」と言ってお尻に手をやると 「ブラボー! すばらしいよ。その知性というか感性は・・・」というなりベッドに仰向けのなって飛び込んで来て私を抱きしめながらこういいます。 「ウマが合うと云うか、K子のシリンダーに私のピストンがフィットするんだよ。水鉄砲の様に・・・」 そのあとのAさんは部屋の明かりをすべて消すと私のイメージ妨げないように配慮しながら水先案内人のように空想の世界に導いてくれます。私は終始目を閉じていますが、Aさんは本当に高二の私を扱うように優しくしてくれました。そして不思議なことにAさんが入ってこようとすると初夜に経験したような痛みを感じてしまって思わずアナタと呟くと肩にしがみ付いてしまいます。でもアナタとは初恋のYさんのことなの。 「セーター越し見たK子のオッパイを見てどれほど触りたかった・・・」と言いながら乳房に手をやるAさん。 「青りんごの様にまだ固いねえー」と云うAさん。 そういわれると乳首が少し痛痒いような中三時代の感覚がよみがえってきて、高二の私が大学四年のYさんと本当にセックスをしているような気分になって体が震えてしまいます。 親鳥が雛を愛しむようにじーっと私を抱いていたAさんはゴメンというとなんの動きもなくあっさりイッテしまいます。彼から見れば取り残された私にすまないと云う気持ちがあったのでしょうが、私は体の芯でYさんのそれが十分イメージできて満足でした。 それとスカートもアレ以上濡れることもなかったし・・・ あと心配なのはYさんとどこかでバッタリ鉢合わせになってしまうことですね。ちなみにAさんはアルバムの私をイメージしていたそうです。 家に帰ったのが10時前。夫はパソコンに向かって残業のようです。 「食事は済んだの?」と訊いてくれる優しい夫。 「ええ、すませたわ」と精一杯の笑顔で応える私。 「風呂入れるよ」 「ありがとう。あなた、まだかかりそうなの?」 「国会は終わったけど引き継ぎがね、一時過ぎには終わりそうだ」 今夜は夫のお相手をしなくても済むと分かるとなにかほっとします。 モデル業に加えSさんとYさんとの擬似恋愛と、Aさんとの本番で疲れ切っていたのです。 この私の疲れの元をただせば、それはAさんに私の水揚げを頼んだ夫にもあるのです。 Aさんは結婚前の私をイメージして抱く分には夫への裏切りにはならないといいます。 そんな論理が世間で通用するはずがないことは承知していますが、そんなことにすがってしまう二人。でも、二年間はAさんとの男女の縁も切れそうです。そして向こうで子供でも出来れば気分も変わって、母のような良妻賢母になれそうな気がするのです。 ちなみに私の絵は翌日完成しましたが、絵の具もまだ乾き切っていないそれは自分で言うのも変ですが期待以上に素晴らしいものでした。Sさんが言ったように髪を下ろしたのも正解でした。わたし、Aさんを前にしてSさんに「ありがとう!」と思わず唇にキスをしてしまいました(笑)。 10号のサイズだそうですが2メーター位離れて見ると私であることがハッキリ分かります。ブルーのジーンズが白いシーツに映えてとても印象的なのです。 Sさんがミロのビーナスに譬えた私の胸も申し分のない陰影で描き出されていてAさんが 思わず「まるでベッドにあがったマーメードだな」とつぶやいたほどです。 その夜は夫がベッドに入ってくるまで携帯で何枚も撮った絵の写真を見ていました。あのジーンズの質感を見事に表現したSさんの技量にうっとりしていたのです。そして夫と二人の世界に入ると 「あなたって、素晴らしいわぁー」とSさんをイメージして感謝の言葉を連発する私。 「K子、きょうはどうした・・・」と気にはなるが満更でもなさそうな夫。 「イイの、イイのよー、あなた、素敵よー」と叫んでしまう私。 「待て、待て、もう少しだから・・・」と一層励む夫。 「ありがとう、あなた、ありがとう、でも、もうダメ、イカかせて」と哀願する私。 「K子、一緒に往こう。もう少し我慢して」と耳元で囁く夫。 「ああ、もうダメ、ね、ダメよー、あなた許してー」と涙目になってイッテしまう私。 イメージセックスなんていう罪なことをわたしに教えたAさんと、すぐ実践している私。夫があまりにも可哀相だと思いますが、夫婦生活が円満ならそれもいいのでしょうかわたしは同床異夢という四文字熟語は余り好きではないのですが・・・ ダイヤモンドはダイヤモンドに磨いてもらいたいと、私のアルバムまで持ち出してAさんを口説いた夫の責任も大きいと思いますがどうなのでしょう。 でも終わったあと夫の側で、見送り来るというAさんのためにどんな装いにしようかとあれこれと思案している自分が罪深い女であるという自覚はあるのです。 夫の海外勤務を機にカードの返却をAさんに申し出ましたが、君の使う額は高が知れている、家族に金銭的な不自由をかけているわけでないので気にしないで持っていてくれといいます。 私がためらっていると、娘が一人増えたと思っているから便りが届かないと寂しいんだよ。あのカードは世界で通用するから信用度のステータスにもなるし、それに君たちの行く所はファッションのメッカだろう、ご主人の仕事柄パーティーに同伴されることも多いだろうし、と言ってくれます。 こう言われるとわたしは目がウルウルになってしまって、Aさんの顔が歪んで見えます。 私は子供ころ読んだジーン・ウェブスターの小説 『あしながおじさん』 (Daddy-Long-Legs)を思い出したのです。 孤児院で育った少女ジュディが一人の資産家の目にとまり、毎月手紙を書くことを条件に幸せな女性になれるように大学進学のための奨学金を受ける物語なのです。 私は夫が望んでいるという母みたいな女性になるためにも、Aさんから小額金を受け取って毎月欠かさず便りが届くようにするつもりです。それが愛する夫とAさんの意に沿うことだと分かったのです。
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