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ページ番号1341番
★ 夜の彼方に咲く・改訂版 ★ 美樹 (四国) 2025-10-19
1. 夜の彼方に咲く 信也
僕の妻、綾子は僕より2つ下の三十四歳。 出会った頃より、今の彼女はずっと美しい。 艶やかな髪、しなやかな肌、そして何より、彼女の身体からは、"解き放たれた女"の甘く熟れた匂いが漂っている。 ──それが、誰の手によって咲かされた花なのかを、僕は知っている。 ある夜、彼女のスマートフォンを、ふとした衝動で覗いた。 浮かぶ文字列。濡れた言葉。見たことのない顔文字。 そして、ある男の名。 【私、あんなに感じたのは初めてです】 【これまでの夫との営みは何だったんだろうって・・・】 最初にそのLINEを見たとき、僕は手の震えを止められなかった。 綾子が別の男に抱かれている──想像するだけで胃が焼けた。 けれど、それと同時に、なぜか……身体の奥が熱くなったのだ。 嫉妬と興奮、羞恥と欲望。 ぐちゃぐちゃに入り乱れた感情の中で、 最後に残ったのは── どうしようもない昂ぶりだった。 彼女の相手は、職場の上司。 単身赴任中の、元ラガーマンの課長。 僕とは違って、体格のいい男に抱かれ、綾子はあそこを濡らしながら、喘ぎ声をあげていたのだ。 始まりは2年ほど前らしい。 快感を教えられた妻は、その後、週に一度、あるいは二度、ラブホテルや彼のマンションで抱かれていたようだ。 当然、関係は深まり、Lineから率直な言葉が溢れ出す。 【昨日は乱れてしまって、思い出すと、顔が赤くなります】 【でもあれが本当のセックスなんですね】 付き合い始めて半年ほどすると、もっと直接的な言葉で悦びを伝えるようになった。 【昨日は、あなたの大きなもので、奥の方をいっぱい擦られて・・・イッテしまいました・・】 【夫のものとは比べ物にならないくらい大きくて逞しいです・・・】 【私、避妊してるから、いっぱい出して・・・大丈夫……全部、受け止めるから】 1年が過ぎる頃には、その男は、綾子に別の男を紹介した。 【今度はこの男に抱かれてこい】 綾子はその命令に従い、ホテルに向かい、初めて会った男の前で服を脱ぎ、セクシーな下着姿であるいは全裸で性の奉仕を行う。 そして──その夜の出来事を、詳細にLINEで報告していた。 なぜだろう。そんな妻を想像するたび、喉が渇き、息が上がる。 家に戻った綾子は、何事もなかったように微笑む。 静かにキッチンに立ち、いつも通りに僕を迎える。 そして夜には、彼らに教え込まれた性技で僕を蕩かせ、自分も甘く啼くのだ。 腰の動き、舌の絡め方、吐息の間、以前とは明らかに違う。 綾子は避妊具を子宮に入れていると、彼らには話している。 けれど、僕にはそのことを黙っている。 「ダメよ。妊娠したら困るから」 そう言って、僕にはゴムを求める。 でも、彼らには……そのまま受け入れているようだ。 その事実に、僕は言葉にできないほどの感情を抱いている。 怒りではない。 悲しみでもない。 ただ──興奮だった。そう、もの凄い興奮だ。 綾子はもう、"僕の綾子"ではなく、"彼の綾子"であり、そして時にはまた"別の男の綾子"なのだ。 その事実が僕を興奮させる。 妻が、他の男たちの指示に従い、淫らに咲き、そして僕のもとへ戻ってくるなら── この関係を、僕は壊したくない。 永遠に続いてほしいとさえ思っている。 2. 夜の彼方に咲く 綾子 私は、女として“咲いてしまった”。 夫には、まだ気づかれていない── そう思っていた。でも、時々、その瞳の奥に、言葉にしない何かを感じることがある。 あの夜のことを、よく覚えている。 最初はほんの出来心だった。 仕事帰りに飲みに誘われた課長。 酔った勢いでホテルに入ってしまった私に、言い訳はできない。 けれど、それは私の中の何かを──開けてしまった。 課長は、大きな手で私を抱いた。 それまでの私が知らなかった方法で、私を愛撫し、責め、そして命じた。 恥ずかしいほど、身体は反応してしまった。 気がつけば、週に1度、2度。 あの人の部屋、ホテル。 一度だけ、課長に『もうやめましょう』と言いかけたことがあった。けれど、彼の指が私の奥をなぞった瞬間──その言葉は、声にならなかった。 そして、いつからか私は、彼の言葉を待つようになっていた。 【今度、あの男に抱かれてこい】 最初は戸惑った。でも、断れなかった。むしろ、身体が勝手に、期待していた。 知らない男と会い、ホテルに入り、命令どおりに服を脱ぎ抱かれる。 それを何度か繰り返すうちに、気に入った男とセフレとして付き合うようになった。それは彼に抱かれるのとはまた違った興奮を私に与えた。 ある日、セフレが言った。 「金をもらってやってこい。俺が選んだデリに登録しろ」 私は、ただ頷いていた。そして毎週のように身体を売った。 自分が物として扱われ、堕とされていくことに、凄く興奮した。 こうして誰かのものになっていく私を、私はどこかで快感として受け入れていた。 そして、家に帰る。 いつも通りに、夫の前では優しい妻を演じる。 ご飯を作り、洗濯物をたたみ、さりげなく笑う。 ──風呂上がりには、彼が選んだレースのランジェリーを着け、膣奥に、まだ別の誰かの体液が残っている身体で夫に抱かれる。 それもまた彼の命令だ。 「帰ったら、俺のザーメンを入れたままで、亭主に抱かれるんだ。いいな」 その言葉には、わざと下品に私を突き落とすような、冷たい笑みが混じっていた。 「……はい……」 私の返事は、小さな吐息のように漏れた。けれど、身体はもう、抗うことを知らなかった。 夫とのセックスでも、以前よりも感じるようになった。 夫が私の身体を開発したのではなく、彼が開発した。その事実が私を興奮させる。そんな身体で夫に抱かれると、以前よりもずっと感じるし、それを夫も喜んでくれている。 夫には話していないけれど、1年前に避妊具を入れた。 それ以来、あの人たちはコンドームなしで中に出すようになった。 夫に「生はダメよ」と言ったとき、どこか罪悪感を覚えた。 けれど同時に、私は昂ぶっていた。 私が夫に嘘をついて、他の男に抱かれ、あれを生で入れてもらい、体液を直接受け入れていること。 その事実が、私を女として、より深く目覚めさせていくのがわかる。 服の選び方も変わった。 メイクも、下着も、爪先も。それも彼の命令だ。 知らぬ間に、男の視線を浴びることに快感を覚えるようになっていた。 そして最近、夫の目が時々、私をまっすぐに見つめてくる。 もしかしたら……知っているのかもしれない。 けれど、問いただすことはない。 代わりに、優しく私を抱く。 その腕の中で、私は時々、こう思う。 夫は本当はすべてを知っていて、すべてを許してくれているのではないかと。 もう一人の家族である娘の遥の目も気にはなる。 お風呂上がり、私は彼が選んだレースのランジェリーを身に着ける。胸の谷間が見えるようにデザインされたキャミソールと、股間の割れ目が透けて見えるTバックショーツ。 鏡の前でふと、脱衣所に置きっぱなしになっていた遥の下着が目に入った。中学生らしく、まだ淡い色の、少女らしい布地。 「……あの子も、いずれ“咲く”んだろうか」 そんなことを考えてしまう私は、やっぱりどこか壊れているのかもしれない。 遥は、私を「普通のお母さん」だと思っているだろう。 でも本当の私は── 誰かの命令に従って他人に身体を与え、快楽に溺れている女だ。 罪悪感がまったくないわけではない。遥がランドセルを背負っていた頃の笑顔を思い出すたびに、心の奥で、小さな棘がちくちくと疼く。 けれど、そう思うのも一瞬。彼からのLINEが鳴れば、私の頭の中は、すぐに別の女の顔になる。 この前の夜、寝室で夫に抱かれているとき、ふと廊下の物音に気づいた。 ──遥。トイレかもしれない。 声を殺し、動きを止める。夫は私の耳元で「大丈夫」とささやき、再び腰を動かし始めた。 そのとき、不意に込み上げたのは、恐怖でも羞恥でもない。なぜか、嬉しさだった。 私はいま、「女」としてここにいて、娘にバレるかもしれないスリルの中で、「母」であることを忘れていた。 いけない。いけないことだ。でも──やめられなかった。 私たちはもう、「普通の夫婦」ではないのかもしれない。 でも、この秘密と快楽に満ちた関係の中で、私は確かに、女として生きているのだ。 3. 夜の彼方に咲く 信也2 ──あの夜も、そうだった。 綾子は少し遅れて帰ってきた。 「残業が長引いちゃった」と言って、コンビニの袋を手にぶら下げていた。 ラップされたサラダと、発泡酒。それを並べて、「今日は簡単にしよう」と笑った。 キッチンで何気なく動く彼女の身体の、その奥に、誰かの体温がまだ残っているのだと思うと、胸の奥がぞわぞわと騒いだ。 彼女は、その日も、誰かに抱かれていた。 上司か、紹介されたセフレか、それは分からない。もしかしたら、客を取ったのかもしれない。そう最近は、セフレの命令でデリヘリもするようになっていた。 湯上がりの綾子が、静かに寝室に入ってきた。 僕はそのとき、もうベッドに横になっていたが、目は閉じていなかった。 「……ねぇ、する?」 ぽつりと、綾子が言った。 その声は、どこか濡れていて、そして少しだけ、許しを請うようだった。 僕は何も言わずに、彼女の身体を引き寄せた。 彼女は自分から脚を絡めてきて、僕の下に入った。 唇を重ね、肌を撫でる。 そのとき、わずかに匂う栗の花の香り。 入れた瞬間──わかった。 彼女の身体には、まだ、別の男の体液がたっぷりと残っていた。 それが僕のものにねっとりと絡みついてくる。 僕はそれを、ただ静かに受け入れた。 怒りも悲しみも、もうなかった。 あるのはただ、どうしようもないほどの──興奮。 「んっ……ぁ……信也……」 綾子は甘く喘ぎ、目を伏せる。 その瞳の奥に、一瞬、何かがよぎった。 後ろめたさか、あるいは……悦びか。 僕は、それを確かめようとは思わなかった。 むしろ、確かめたくなかった。 彼女の奥で、僕は動いた。 彼女はそれに応え、腰を揺らし、足の指をきゅっと丸める。 その顔には、確かに快楽が浮かんでいた。 けれど、それが"僕によるもの"である保証は、どこにもなかった。 ──それでも、いい。 誰かに抱かれたあとの綾子を、僕が抱く。 彼女の身体にまだ残っている男の体液を、僕が舐める。 それは、倒錯かもしれない。 でも、たまらなかった。 僕は確かに、いまこの瞬間、彼女と最も深く繋がっていると思った。 僕の下で喘ぐ綾子は、もう"僕だけの女"ではない。 だけど、"他の誰かだけの女"でもない。 彼女は、夜の彼方に咲いたまま、また僕の腕に戻ってくる。 それが、この上なく──美しい。 4. 夜の彼方に咲く 遥 お母さんは、最近、なんだかきれいになった気がする。 前からきれいだったとは思うけど、最近はもっと、うまく言えないけど── なんていうか、「自分のことをちゃんと知ってる人」っていう感じがする。 髪もツヤツヤで、ネイルも前よりちょっと派手になったし、ベランダに干してある下着とかも、レースとか黒とかが増えたのがわかる。ショーツもTバックだったり、ガーターベルトなんかもある。 「これ、ちょっと高校生の娘がいたら怒られそうよね~」 って笑ってたけど、うちはまだ中学生だから、大丈夫だよって返した。 でも正直、お父さんとお母さんが、どこか「普通じゃない気がする」って思い始めたのは、もうずっと前のことだった。 ある日、夕飯のとき、お母さんがふっと笑った。 「今日はね、ちょっと疲れちゃって、コンビニで済ませちゃった。御免ね」 そう言って、サラダと、発泡酒と、簡単なお惣菜だけをテーブルに並べた。 でも、お母さんはどこか嬉しそうだった。疲れてるのに。 そのあと、お風呂から出てきたお母さんは、シースルーのランジェリーを着てて、ちょっとだけ、いい匂いがした。 そのとき、お父さんがテレビを見ながら、ちらっとお母さんを見た。 無言だったけど、その目は、何かを知ってる目だった。 ……なんだろう。 たまに夜、寝室から音が聞こえてくる。 うるさいとかじゃないけど、微かに──お母さんの声が聞こえる。 こっそりイヤホンで音楽を聴きながら、気づかないふりをしてる。 でも、一度だけ、夜中にトイレに起きたとき、寝室のドアが少しだけ開いてた。その隙間から、お母さんの脚が見えた。うす暗い部屋の中で、白くて、艶っぽい脚が少し震えていた。 見ちゃいけないと思って、すぐにドアの方から目をそらしたけど── 心臓がドクドクいって、なんだか、泣きそうだった。 最近、お母さんが出かけるときの服が、少しずつ変わってきた。 前よりスカートが短かったり、ブラウスがシースルーでブラが見えたり。 どこに行くの?って聞くと、「ちょっとランチよ」とか、「会社の人と打ち合わせよ」だとか言うけれど—— でも、そのわりに、口紅の色が濃かったり、香水を変えてたりする。 この間、お母さんがスマホをテーブルに置きっぱなしにしてたとき、通知のポップアップが一瞬だけ表示された。 そこには、見たことのない名前と── その後に続く【今日はいい声で啼いてたな】というメッセージ。 意味は、なんとなくわかってしまった。でも、その“わかってしまった”ことが、頭を真っ白にした。 お父さんは、何も言わない。 お母さんが遅く帰ってきても、何も聞かない。 でもその代わりに、いつもより優しくお母さんに接している気がする。 なんで? 怒らないの? 悲しくないの? って思うけど── もしかしたら、お父さんは、全部知ってるのかもしれない。 知ってて、黙ってる。 それが、もっと怖い。 私はまだ中学生だけど、 「家族」って、どんな形が正しいのか、もうわからない。 でも、確かにわかるのは── お母さんは今、「誰かの女」になっていて、 お父さんはそれを、「夫としての愛」で受け止めてるということ。 そして私は、その2人の間で、何も知らないふりをして、 今日も普通に、「いただきます」と言う。 でも、夜の彼方に咲いているのは、 たぶんお母さんだけじゃない。 きっと、お父さんも、私も── 夜の奥で、誰にも見えない花を咲かせているのかもしれない。 5. 夜の彼方に咲く 課長 ──最初から、壊れていたのかもしれない。 いや、壊したのは俺か。 いや……違う。壊れたいと、どこかで願っていた女を、ただ導いただけだ。 綾子と初めて寝たのは、雨の夜だった。 営業帰りに駅前の焼き鳥屋へ誘い、カウンターで酒を飲みながら、たわいのない話をした。 最初から、彼女の瞳の奥には、火が灯っていた。 それを、俺は知っていた。 そして──焚きつけた。 「終電、もうないね」 「……ですね」 たったそれだけの会話で、十分だった。 ホテルのベッドで、綾子の服を脱がせたとき、彼女の身体は小さく震えていた。 羞恥か、罪悪感か、あるいは期待か── だが、身体はすでに濡れていた。 女は頭で否定しても、身体が正直に答えを出す。 俺は女の扱いを知っている。 どこを撫で、どこを責めれば声が漏れるか。 どんな言葉で崩れるか。 年を重ねるほど、男は“理解”で女を征服する。 「声、出してみろ」 「誰に抱かれてるか、言ってみろ」 「旦那のものと比べてどうだ?」 「亭主より気持ちいいか?」 命令すれば、綾子は素直になった。 許可されて堕ちることで、自分を肯定できる女。 だから、俺は命じた。 週に一度、あるいは二度── 彼女の方から予定を聞いてくるようになった頃には、もう完全に俺の女だった。 【今週、いつ会えますか?】 【抱かれたいです】 【……お願い、声が聞きたい】 “他人の女”が“自分の女”に変わっていく過程ほど、甘美なものはない。 だが、1年が過ぎた頃、俺はもう一歩踏み込んだ。 “別の男”を与えたのだ。 それが綾子にとって、次の扉になると確信していたから。 「今度、この男に抱かれてこい」 そう送ったLINEに、数分の沈黙があった。 だが、すぐに── 【……わかりました】 何も聞かず、ただ従う。 その無言の服従が、なにより官能的だった。 知らない男に抱かれた綾子は、その夜の出来事を詳細に報告してきた。 どこで、どんな体位で、何回イかされて、どこに出されたか── そのたびに、俺は別の快楽を覚えた。 “支配”は、“行為”以上に深く、甘い。 そして次に命じたのは、“売春”だった。プロに落とすことで、最後の“家庭の女”としての仮面を剥ぎ取るために。 セフレの男にそう言わせ、俺は後押しした。 「金をもらって抱かれてこい」 「知らない男に、金を貰って、体を与えろ」 「自分の価値を、男の欲望で測ってみろ」 綾子は、また頷いた。 綾子は、とうとうそこにまで堕ちた。 だが、その瞳の奥にあったのは、絶望じゃない。 ──快楽だった。 もはや、ただの人妻ではない。 誰かの所有物として命令を受け入れ、淫らに咲く“雌”になった。 俺は時々、わざと冷たく言った。 「今夜も中に出す。そのまま、旦那に抱かれろ」 「お前の愛液と混ざったままで、イってこい」 「いいか。バレるかもしれないって思いながら、抱かれてこい」 綾子は、躊躇わない。 微かに震えながら、小さく頷く。 【……はい】 それだけで、俺の中の本能が満たされていく。 “いい女”は、家庭の中で飢えている。 愛されているはずの場所で、女としての渇きだけが深まっていく。 綾子もそうだった。 俺は、拾っただけだ。咲かせただけだ。 男に弄ばれ、命令に従い、淫らに堕ちていく女。 その姿を、誰よりも美しいと思う。 声の出し方、腰の動き、男の扱い── すべて俺が教えた。 綾子の身体には、俺の痕跡が染み込んでいる。 旦那が気づかないはずがない。 ──いや、きっと気づいている。 だが、あの男は、壊れなかった。 綾子が遅く帰っても、化粧が濃くなり下着が派手になっても、避妊を拒む理由が曖昧でも、彼は決して問い詰めない。 代わりに、静かに、そして優しく綾子を抱く。 まるで── すべてを知っている男の顔だった。 自分の女が、他の男に抱かれ、堕ちていく様を、知りながら見過ごす。 いや、受け入れている。 それどころか──悦んでいる。 そう感じる瞬間が、確かにあった。 いつか綾子が言っていた。 「夫、変わったんです。前よりも、私を丁寧に抱くようになった」 それを聞いて、俺は思った。 ──“完成”したな、と。 綾子はもう、あの男のものじゃない。 完全に俺のものだ。そう”身の心も”というやつだ。 そして旦那は、もはや「綾子を所有する夫」ではない。 “誰かの命令で堕ちていく妻を、黙って抱く夫”だ。 滑稽だが──美しい構図だ。 綾子が男たちに乱され、汚されて、なお「妻として家に戻る」ことで、この関係は完成する。 夫が、全てを知った上で受け入れている。 その事実が、俺には妙に心地よかった。 ──ああ、面白い夫婦だよ。 だから俺は、壊さない。 壊さずに、壊れたままを維持する。 それが、いちばん淫靡で、美しい。 今度、中学生の娘が旅行に行っている日に、綾子の家に遊びに行くつもりだ。表向きは、綾子の上司として、呼ばれていく形。 夕食後、旦那のいる前で、綾子に言わせるつもりだ。 「課長さん、お風呂を使ってください」 そうしたら、俺はこう答える。 「そうだな・・・じゃあ、綾子、背中を流してくれるか」 綾子は「・・・はい・・・」とだけ答えて、俺に付いてくるだろう。 そして風呂で、綾子に俺のものを素手で洗わせる。もちろん綾子はあそこを濡らすだろうが、知らんふりをする。 風呂から出たら、俺はバルローブを着て、セクシーな下着姿の綾子を連れて、居間に戻る。 そして亭主に、「今夜は綾子を使うからな」と宣言して、寝室に向かう。もちろんドアは大きく開けたまま、明るい中で綾子を抱くつもりだ。 「亭主が見ているぜ」と耳元で囁いてやると、綾子はいつもよりも乱れて、大きな喘ぎ声を出すはずだ。 次の日の夜には、夫婦は黙って燃えるだろう。 今回は、娘が旅行に行っている日だが、次は娘のいる日に泊まりにいくつもりだ。
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