|
||||
感想の削除
|
ページ番号123番
★ 妻とのダイアログⅡ ★ 珊瑚七句 (東京都) 2005-10-04
頁番号102に記載したように一年ぶりに取引先の部長に抱かれた妻の心の動き等を報告します。ここまでに至る経緯過程については頁番号75と21を参照してください。
部長が海外に赴任する日が偶然私たちの結婚記念日であった。私は一計を案じ一年前妻が部長の一夜妻として仕えた某ホテルの8021号室を予約しておいた。 空港にはたくさんの見送りの人がいて、その筋の綺麗どころも何人かいて雰囲気に華をそえています。 輪の中に私たちの存在に気が付いた部長は目礼を送ってきます。体育会系の学生の応援歌の斉唱が始まり、人の動きが一寸止まったのを見計らって妻のところまで来ると 「奥さん、この前は本当にお世話になりました。貴重なお品を頂いて光栄です。」と言ってすばやくもとのところに戻ります。周囲から見ればごく普通の会話ですが妻の首筋が上気するのが分かります。 部長を見送ったあと高輪にあるホテルのラウンジで食事をしながら結婚記念日の祝杯を挙げた。 「今日は君を少し酔わせて本音を聞きたいものだ。」といいながらポートワインを妻のグラスに注ぎます。 「本音? なんですかそれ」 「君と部長のこと・・・」 「本音も建前もありません。あなたの強い意向に従っただけですから。シナリオを書いて演出したのはあなたですからね。」と人もいない周囲を気にして小さな声で云い 「部長さんも精一杯演技をしていただけ。私はそれに応えていただけ。演技者に本音も建前もないのよ。」と念を押します。 「じゃーK子と部長の名演技に乾杯!」といってグラスを傾けしばらくは海外勤務時の思い出話等をした。 「ところで部長の奥さん魅力あるねえー。美人だし、旅館の女将みたいに粋で隙があってないようなひとだなあー」と再度話題を部長に向けると 「部長さんも罪作りな人ねえー、あんな申し分のない奥様がありながなら私なんかと・・・」とため息混じりにつぶやきます。 「演じているだけだから」と私がとりなすと 「この前飯田橋のとき、部長さん涙目になったでしょう。・・・」と恥ずかしそうにテーブルに置かれた指先をみながらいいます。 「あの場面ね。あれはおそらく君が無意識で“恥ずかしいわあー”といいながら部長の膝にすがり付いたので、君の今までの所作言動が演技ではないことを確信した感動と感謝の涙だよ。あれは。」と断言します。 「そうかしら・・・」とあいまいに言って先刻の演技説を蒸し返しません。だいぶ酔いが廻ってきたようです。 頃合いをみて「ねえーK子、例の部屋を予約して置いたけど。もうチェックインできる時間だよ。どうする?」と訊くと 「あなたって悪趣味ね。」といいながらも目は受け入れています。 部屋に入ると中の様子は一年前とまったく同じで中央にほぼ正方形の大きなダブルベットがあった。 私は上掛けを目いっぱいまくり白いシーツをむき出しにすると 「プロレスのリングみたいだね、このベッド・・・ここで部長と上になり下になりの60分3本勝負か。一本目は海老固めだったりして。」と妻をからかいます。 「あなたのためにね。・・・でもそんな言い方しないで、はじめての経験なのよあなた。」と私に寄り添います。 「そうだね。K子の初舞台だね。女を演じた。」 「部長さん、邪魔だからといってこの上掛けを剥いでベッドの下に落としちゃうのよ。もうベッドインじゃなくてベッドオンの感じね。」 「最初から?」と云いながら私は上掛けを取り払います。 「そうよ、このフロアーランプも点けたままよ。」といって歩み寄り点灯しますがその足取りが酔いの為かちょっと乱れます。 「ほう、純白の舞台だね。スポットライトの点いた。・・・こんな明るい所で抵抗なかったの?」 「だって、お願いしても聞き入れてくれないのよ。」と甘えるように肩を揺らします。 「部長はA.V男優を意識していたのかな?・・・さっきK子がいったように演技していたのかも・・・」 「だって考えてごらんよ。アダルトのベッドシーンは照明も十分で、上掛けもないよ。見せるためにね。」 「私は見たことないから判らないけど。そうなの?」と妻が驚きます。 「この辺に固定カメラがあるものとして、君の姿態や表情がよく撮れるように位置を工夫したりして。」 「それから恥ずかしいセリフを言わせられたり、言われ続けたといっていたが具体的にはどんなこと?・・・飯田橋を参考にすると大体想像はつくけど。」 「それは部長さんと私のプライバシーよ。あなたは想像してください。」と妻は答えます。 夫婦の営みが終ったあと少し眠りたいといって背を向けた妻にぴったり寄り添いながら 「一年前、ここでの部長とのとっかかりはどうだったの?」とピロートークを試みます。 セックスに起承転結があるとすれば、転結の部分を盗み見しただけなので興味があった。 「とっかかり?」と低い声でつぶやきます。 「序章というかオープニング」といいながら左手を回して妻の乳房をつかみます。 しばらく間をおいてから思い起こすようにゆっくり語り始めます。 「バスルームに入ってきたのよ。ほんとうにびっくりしたわあー。あの時は。」としばし感慨にひたっているようす。 「それから?」と左手に力を込めながら先を促します。 「あとはあなたにレクされたように流れに身をまかせたわ。」 「シャワーの?」 「意地悪ねえー」といって私の左手の動きを抑えます 「殿方は繊細だから流れを止めないようにとあなたおしゃったでしょう?」 「そんなこといったかなあー?・・・それで部長の言いなりになったの?」 「それが私のお勤めでしょう?」 ここにきて起承転結がつながり私が目にし耳にした後半部分が鮮やかによみがえります。 「具体的にその流れを話してよ。二人の様子をもっと。」 「そんなこと私の口からいえないわ。オフレコにしようと約束したの。」 「部長さんは役者よ。かりそめにでも一旦口から出た言葉にはそのとき魂が宿っているそうよ。」 「わかった。要するにここで二人の魂がサアウンドしたわけだ。」と耳元で囁くと背を向けたまま小さく頷くと 「あなたの感想を聞かせて。」と消え入るようや声で呟きます。 「この部屋に戻ったと君たちはすっかり身支度を整えて、私を待っていたよね。」 「君が部長をドアの所まで送ったとき、ノブに手をやりながら思い返したように振り向いて君を抱き寄せ長いキスをしたでしょう。」 「二人の身のこなしが流れるようにスムースなので、ちょっと妬けたな。二人とも決まっていたし。君も役者だな。」 「どうして妬けるの?」 「ベッドの上なら裸で抱き合ってキスしているのを見てもなにも感じないと思う。オンの状態だから。約束ごとだから。」 「着替えてもう部屋を出ようとしているときはオフの状態よ。“部長ちょっと待ってよオンとオフをわきまえてよ!”といった感じ。」 「夫としての聖域侵されているような不思議な感覚かな。」 「しかし、君の後姿を眺めていたら、二人ともいいセックスをしたのだと思うようになったよ。」 「キスが終って部長が帰ろうとすると”ちょっとお待ちになって“とか云って、テイシュボックスのところに行ってから、娘のように小走りに戻り部長についたルージュを拭いている君を見て、K子を開く合鍵みたいなものを部長が手に入れてしまったのかなと心配になってきたけど。」 長い沈黙のあと向こうをむいたまま妻は感慨深げに語り始めます。 「そうね、一年前ここで部長に私の暗証番号を盗まれたかもしれないわ・・・」 「この前の飯田橋とき、あなたが浴室に行ったあとしばらくして部長がトイレにいったの・・・」 「戻ってきて襖を閉めると“ご主人湯加減はどうかな”といいながら私の後ろを通る時いきなり両肩をつかむの・・・」 「そして“僕も奥さんの中に入りたい”とか哀願するようにいうのよ。・・・」 私は相槌をいれることもなく、身動きを止めて聞いています。 そんな私の気配を感じて私がショウゲキを受けたとでも思ったのか 「厭ねわたし、あなたに乗せられてこんなことを話して。まだ酔いが醒めないのよ。少し眠らせて。」と上掛けを引き上げます。 「ねえー、こんな機会めったにないから話して。素面では話せないこともあるし。」と慌てて妻を引き止めます。 私の真剣な様子に負けたように妻は話を続けます。 「子供が母親におねだりするようにさっきのフレーズを繰り返すのよ耳元で部長。」 「“部長さん、だめですよ。人が来ますよ。”とたしなめたのに言うことを聞いてくれないの・・・ことばの優しさと裏腹に強引なのよ。」 「もっと具体的に話してよ。」 「逃げようとして体をひねったら後ろに引き倒され、仰向けになったところを半身なって押さえ込まれたの。」 「拒絶の意志を伝え、抵抗したのだろう?」 「それはそうよ。でも大きな声を出すわけにいかないしでしょう。・・・」 「そのうち“人がこなければいいの?”といいながら右の膝頭を手のひらでギュウーと掴まれたら、体の力が抜けてしまってもう抵抗する気力もないの。・・・あとは部長にされるまま。」 「どうしてそうなるの。」 「さっき一年前ここで部長がバスルームに入ってきてびっくりしたことをあなたに話したわよね?」 「ウン、少しショックだったけど。」 「いろいろ遣り取りがあったあと、私がシャワーを使っているとき部長に膝頭をつかまれたら全身の力が抜けちゃって立っていられなくなったのよ。」 「部長が君の前に膝まついていたとしたらそれだけが原因かね? 立っていられなくなった。」 「バカねえーあなた、まじめに聞いていないのなら止めるわよ、わたし。」 「ゴメン、つい話しに引き込まれちゃって。・・・こっちを向いて話してよ。」 妻は仰向けになると天井の一点を見つめながら話を進めます。 「飯田橋のときも同じよ。これあの時の感覚と同じだとすぐわっかたの。もうこの人には敵わないと観念しちゃったのね。アタマのどこかできっと。」 「催眠術をかけられた感じ?」 「経験がないからわからないわ」 「結果として盗塁されたわけだ。そして」とさきを促します。 「二言、三言何か云うとじーとしたまま動かないの部長さん。あんな明るいところで恥しかったわあー」 「ネコが捕らえたネズミをイタブッテいるみたいだね・・・君はどうしたの?」 「目のやり場がないから、目を閉じて私もじっとしていたわ。」 「重苦しい沈黙の世界だね・・・どのくらい続いたの?」 「五分くらいかな、あなたの気配がしたら止めたけど」 「“奥さん、お湯も豊富で結構な湯加減でした”なんて云うのよ耳元で」 「あなたがきてからは道化役から本来のご自分に見事に切り替えることができるの。部長さん、役者よ」と讃えるようにつぶやきます。 「K子、もうひとつだけ訊いていい?」 「このまえ終って身繕いをしていたら、“いい風呂だから汗をながしてから帰りなさい”と部長に言われ断れなくて入浴したよね。」 「ちょうど湯加減もよくて立派なお風呂ね。部長さんが熱心に勧めたのも分かる気がするわ。私始めてよ檜造りの浴室」 「しばらくして、部長が入っていったでしょう。・・・最後の仕上げをして差し上げたの?」 「バカねえー、あなた・・・」 「さっきもそうだが、“君のバカねえー”はそんなこと当たり前でしょう。そんなことをするわけないでしょう。のうちどっち?」 「言わぬが花ということもあるわよ。」 「ところで、部長とこうなったことについて後悔していない?」 「その辺のところは上手くいえないのだけど、ここまで来るのに私の心のささえになったことが三つあるの。」 「聞かせて。」 しばらく間をおいて妻は自分の考えを語りはじめます。 「一つはあなたが妻であり二児の母である私が悪い方法に向かうようなことを興味本位で進めるはずがないという信仰に近い確信ね。」 「K子、信用してもらって嬉しいよ。ほんとに」と妻の手を握ります。 「もうひとつは“人に迷惑をかけなければ夫婦の間にタブーはない。人生様々だよ”と言ったあなたのことばね。」 「もうひとつは。」 「写真とはいえ私を見て、私をほしいと求められたことね。部長があなたに。」 「そして結論は?」と答えを促すと 「あなたを信用してよかったわ。・・・でも誤解しないでね。他の方とこんなこともう金輪際しませんからね。」 「部長とは?」 「部長さんのオファーがあれば、1年に一度ならいいかなという感じよ。」 「七夕婚かロマンチックだね。」 「この一年で何か変化があった?」 「そうねえー、よく夢をみるようになったの。顔見知りの男性との。求められるのよかなり強引に・・・後味は悪くないのだけど、部長とのことがトラウマになっているのかしら。あなたフロイトを持っていたわね。」 「持っているよ。夢判断かい。・・・その他は?」 「あるけど不謹慎なことなので止めときます。」 「僕と部長とのセックスの違いは?」 「あなたは夫であるとともに子供の父親よね。子供の成長につれて夫より子供のお父さんというイメージが強くなってくるの。“逆は真なり”であなたもわたしをそう見ているはずよ。」 「そういわれればそうだね。子供の前では“お父さん”と呼ぶことが多いよね。」 「そんな意識がどこかアタマの片隅にあって、毎日朝食をとるような生活の一部になっているのよ。私とあなたのセックスが。それはそれでいいの。そうあるべきなのよ。」 「なるほど。」 「私から見れば部長は男よ。一年に一度食べるか食べられないかのデイナーよ。でもどっちかを選べといわれたら毎日の朝食よね。」 「それはそうだ。酔うと雄弁になるね“お母さん”」 「少し眠りましょうよ。お父さん」
![]() |
|||
|