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日記番号:747

夢は妻とともに…

傍観者(関東)


  感想集

リング

苦しそうに呼吸を続けていた美枝子は、やがて吊り糸が途切れたように力を失い、首を垂れました。
光景を見届けた吉沢は、微かに笑みを浮かべながら、左手を美枝子の眼前に差し出したのです。
その指先には、美枝子が必死に耐え隠してきた、女の本能が纏わり付いていました。

「イヤ…」
「見るんだ!」

顔を背けたようとする美枝子に吉沢は強い口調で告げ、ゆっくりと人差し指と中指を広げたのです。
美枝子と私に絶望感を促すかのように、指先は一筋の糸を作り出しました…

「ほら…分かっただろ。美枝子は女なんだ…」
「………」

そして吉沢は、両手でしっかりと美枝子の脇腹と腰骨をつかみました。
この明らかな次の動きへの準備に、私の心は締め付けられました。

(美枝子…)

美枝子はその動きに…いや次の動きに身構えるかのように、吉沢の太ももについていた左手を離し、腕をあげ肘を曲げながら張り、手の平を私に見せながら口元へ運び、薬指に光る指輪を噛んだのです。

十二年前、二人で訪れた宝石店の人に聞いた、古代ギリシャ時代からの言い伝えに由来する『命をかけてあなたとの永遠の愛を…』という、誓いを意味する指輪…
お互いだけを見つめあい、交換、指を通しあった指輪…

請われ望まずも受け入れた現実で、女としての本能を見せ付けられて尚、妻であることを、存在を消された夫への想いと慈しみを伝える為に、夫婦の営みの時には見せたことものない仕草で、女の性に抗おうとする美枝子。
そのいじらしいまでの姿に私は涙を流し、心の中で美枝子の名を呼び続けることしかできませんでした…
(美枝子、美枝子、美枝子、美枝子……)

言葉も掛けず吉沢は律動を始め、あわせるように美枝子のくぐもった息の音が続きます。

「ンッンッンッンッンン、ンッンッ、ンッンンンンッンッンンン」

吉沢…いや、この部屋の支配者となった雄が発するむき出しの本能を、秘部で受けとめさせられながらも、口元を手の甲で覆うようにしながら指輪を噛み、声を出すまいと耐える美枝子の姿に、私は狂いそうになるほど愛おしさと嫉妬を感じていました。

「ンッンッフゥ」「ンッフンウッン、ンッフッウッン」「ッウッンッフッッフ」

無言で支配者は自在にリズムや角度を変え、美枝子の膣の感触を味わい尽くすように永い律動を繰り返します。
その動きに美枝子は苦悶の表情を浮かべ、辛そうな呼吸を繰り返し、襲いくる刺激に必死に耐えていたのです。

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