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日記番号:1088

淫の刻印 2

アスカ(京都)


  感想集

38 赤坂見附 決着

トモエと康子は、指定された赤坂のプラザホテルの客室に来ていた。
「概略、電話で聞いたが、組織から抜けるなんて事、考えているのかな?」
「依頼主の要請です。」
「誰だ…それは・・・」
「依頼主は、言えません。抜けないなら、康子が、この一ヶ月に抱かれた相手の名前を公安当局に話すしかありません。弁護士としてね。」
二人供、目と目を合わせている。
「仮に、康子が、組織を離れても、今の生活にどっぷりとつかり、体も男漬けだ。また、戻りたいと言うだろう。キャンセルに伴い違約金も、莫大だな・・・ダンナも許さないぞ…」

「組織運営にリスクは、つきものだよ。ダンナとの関係は、この際、別の問題だ。康子、警察に行こう…」
す~っとトモエが、立ち上がると、まわりをかためたヤクザ達が、取り囲んだ。

サーっと男が、全員を制した。
「俺たちも、キレイなビジネスを心がけている。だから、優良な顧客に恵まれた。確かに…リスクは想定すべきだ。組織の一員が、離脱するのを、暴力で、解決すれば、顧客は、離れてゆく。康子…いいのか…それで…」
「はい。」
「決まりだな…今後…一切、康子には、手を出さない事を、男の約束としよう。」

降りてゆくエレベーターの中で、康子は、
「怖かった…あんた…抱いて~震えが、止まらないの…」
「大丈夫…か?」

二人が、出て行ったあとの部屋は、大荒れだった。
「トモエ…何者だ…ふざけやがって…」
取り巻きの連中も、何もわからない。ヤクザ同士なら抗争で、決着するが、財界、政界そして、芸能界相手の売春組織は、抗争と言うわけには、いかない。

まったく危機管理の能力は、皆無だった。
「まあ、いい。康子の身元は、わかっている。ダンナもいるしな。間違いなく、戻る。普通の生活など、戻れるわけが、ないわ。」

ホテルの地下駐車場で、トモエが、康子を助手席に乗せた時、張と配下の人間を連れてきた。険悪なめつきの男、巨漢の男を従え、トモエに詰め寄った。
「ふざけた真似をしゃがって…」
トモエは、無表情に、張を眺めている。
「康子…おまえと言うヤツは…」いきり立った憎悪の顔で、康子を見詰める。
「これは、頭の意向か?それとも、はねあがりのアホの仕業か?」

「てめえ…」何を言われても、トモエは、動じず、さめた目で、男達を眺めている。その瞬間、巨漢が、思いもよらないスピードで、体重をかけた鉄拳をトモエにふりおろした。
「ぐおおお~」グシャ~と言う音がした。
巨漢が、苦悶の表情で、口から泡をふいている。
「そろそろ、警備員くるぞ…警察もな…頭も事情聞かれるぜ…あんた、どうやって、オトシマエ…つけるんや?」

一週間後、東京湾に身元不明の男が、浮いていた。死因は、水死。メディアも取り上げない、張のなれの果てだった。


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