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日記番号:747

夢は妻とともに…

傍観者(関東)


  感想集

スイートルーム

ロータリーに滑るように入ってくる高級車、女性のエスコートにもたつきの無い紳士、スッキリとした制服姿でカートを押すスタッフ…
行き交う人や車を大きなウインド越しに眺めながら、このホテルにいること、このホテルで行うことの場違い感を感じていました。そして、それは妻も同じだったと思います。

〔待ちましたか?〕

振り返ると、スーツ姿の吉沢さんが立っていました。
「こんにちは。」
『こんにちは…。』
〔私ひとりで申し訳ありません。妻は部屋で待っています。もちろん男性陣も…〕
「そうなんですか……」
〔今日はお子さんをどうされましたか?〕
「夜は私の実家に預かってもらうことになっています。」
〔そうですか、それならゆっくりできますね。では行きましょうか…〕

私たちは吉沢さんに従い、ラウンジをあとにしました。
エレベーターに乗ると吉沢さんは最上階のボタンを押し、今日のことを話し始めました。
〔部屋はスイートルームです。少し早いクリスマスパーティーですから豪華に?行こうと思いましてね(笑)〕
「はい…」
『………』
〔今日部屋には、妻の他に男性が3名います。3名とも2年ほど前からの付き合いで、私たちのパーティーには必ずと言ってよいほど参加してもらっている人たちです。〕
「私たちのことは…」
〔もちろん話してありますよ。3人とも楽しみにしてくれています。大丈夫気にしないでくださいね。私たちがお誘いしたのですから。〕
「はい…」
『………』

エレベーターのドアが静か開き、その少し先にあるの部屋へ私たちを招き入れてくれました。
エントランスに置かれた鉄製の花瓶に飾られた紅い薔薇が高級感を演出しています。
入ったことの無いスイートルームという空間に、妻とども圧倒されていると…次の扉が開き、白いバスローブ姿の美佐さんが現れ、笑顔で妻を抱きしめました。
『美佐さん……お邪魔します。』

美佐さんに会っても尚、緊張したままの妻。美佐さんが手を引き、リビングへと入りました。
アイボリーを基調色とした部屋はとても広く、随所に置かれる調度品やシャンデリアが、大きな窓から差し込む柔らかな光りとあいまって、これから始まるパーティーの内容との異質感を醸しだしていました。
私と妻は、吉沢さんに長ソファーへと促され、その柔らかな座へと腰掛けました。

〈ミーちゃん今日はありがとね。緊張しないでって言っても無理なのは分かってるから、この前のワインで乾杯しよっ!ね!優一さんはグレープフルーツジュースでいい??〉
そう言いながらグラスを持って来てくれた美佐さんは…
結い上げた髪、ほんのりと赤みを帯びた肌、手入れが行き届いた指先や踵。
歳を重ねてきた女の妖艶さが、バスローブから溢れ出ているように感じられました。

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