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日記番号:844

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幸治(都内)


  感想集

7章【不倫談義】-1

あの衝撃的な温泉宿の一夜から3ヶ月程経った頃、私は行きつけの新宿にあるスナック《タッキー(仮名)》で、ある中年男と親しく話す機会があった。その男も《タッキー》の常連客で時々顔を合せることはあったが、これまではあまり親しく話したことは無かった。それは男が女連れで来ることが多かったからだ。
《タッキー》は8席のカウンターと奥にボックス席が2つある小さなスナックで、60代の立木マスターと40代の美紀ママの2人だけで営業をしている。2人が内縁関係であることは常連客の間ではよく知られている。
私は入社して2、3年経った頃、当時の職場の先輩に連れて行かれたのが初めで、その後、その先輩が海外赴任になってからは時々1人で行くことになった。先輩からは『会社の同僚や仕事の関係者から完全に離れて何も考えずに飲む場所も必要だ』と、教えられたし、また『俺が帰って来るまでに席を温めて置けよ』とも言われたので、仕事関係の付き合いで会食の後、1人で静かに飲みたい時は必ずこのスナックに寄ってから帰宅していた。
その夜はプロジェクトの打ち上げ会があり、プレッシャーから解放されて精神的にも少し高揚していた。それに、普段はあまり付き合わない2次会で同僚から煽てられて少し飲み過ぎてもいた。
その夜も《タッキー》に行くと先客にその中年男と30代くらの女のカップルが一組だけいた。
私が入ると入れ替わるように、そのカップルは出て行った。連れの女は初めて見る顔だった。30代後半で洋服も地味な感じがした。
彼等が出て行くと、私とマスター、それにママの3人だけになった。
話題はさっき出て行ったカップルの話になり、連れの女は人妻らしい。
それが発端となって人妻の不倫の話題に発展した。
話の内容は週刊誌ネタではあるが、最近のデータによると人妻の浮気率は50%を超えているらしい。実際に身近でも離婚の話は聞くし、私の親友も奥さんの不倫が原因で離婚した。とても仲の良さそうな夫婦に見えたので、親友からその話を聞いた時はショックだった。
人妻の浮気は景気と関係があるらしく、不景気なほど浮気率は上がるらしい。特に最近は普通のサラリーマン家庭での不倫が横行していると言う。その理由は不景気による会社側の社員の人事管理が厳しくなりストレス過剰となっている。また給与が上がらないのでそれを補うために妻が働きに出たり、またパート時間も長くなり、夫婦のコミュニケーショや精神的に支え合う余裕が少なくなっている。夫婦生活はセックスが基本であるが、ストレス過多でその回数は減っているらしい。セックス回数の現象による不満は夫より妻の方が大きい。それが原因かどうか分からないが、不倫は妻側の方が圧倒的に多いらしい。
さっきの男が連れて来る女も人妻で、いつも同じ女では無い。やはり好みがあるのか、女の特徴は小柄で色白、長い髪で染めていないのがタイプのようだ。
その女の後姿を見た時、どこか陽子とイメージが重なった。
それにしてもよくモテル男だと思う。

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