メニュー ログイン

日記番号:844

DELETE

幸治(都内)


  感想集

6章-2

部屋に戻って寝ようとした時、チャイムが鳴って誰かが来たことを知らせる。
時計は3時を回っている。私たちは顔を見合わせる。
「今頃、誰かしら?」
取りあえず、私が入口の引き戸を開けると、露天風呂で一緒だった女が立っていた。
「奥さまは大丈夫でした?ちょっと心配だったので・・・」
「先ほどはご迷惑おかけしまして、色々と有難うございました。お陰さまでもう大丈夫です」と、礼を言う。
「それは良かったわ。あのぅ~、もしよろしければご一緒にお話しませんか?お向いのお客さんもおりますし、お飲物も用意してありますし、せっかくお知り合いになれましたので・・・。あら、奥さま、先ほどは・・・、お元気になられたようですね?」
私の後ろには陽子が心配そうに立っている。
「先ほどは・・・、ありがとうございました」
「いかがですか?せっかくの機会ですから、楽しくおしゃべりでも・・・」
私と陽子は顔を見合わせる。
陽子は困惑した顔で私を見る。
「せっかくのお誘いですけど・・・、私たちはちょっと疲れておりまして、ゆっくり休みたいと思っておりまして・・・、失礼させていただきます」
「そうですかぁ・・・、残念だわ、せっかくのチャンスを作ったのに・・・」
女は急に乱暴な言葉になり、がっかりした顔をして帰って行った。
その後、隣室からは大きな話し声や笑い声が聞こえてきたが、私たちはそのまま眠りに就いた。

隣室のカップルが露天風呂で一緒になったのは偶然か故意か分からないが、私たちのすぐ後から入って来たのはやはり・・・。
それと、勃起したペニスを陽子に見せたのは故意か冗談か?それとも両方か?
その真意は分からないが、「それを見せて私たち夫婦の反応を確認したのかも」と、後になって陽子がポツリと言った。
「幸治さんがタオルを取りに行った時、奥さんから誘われたの。『この後一緒に遊びませんか?』って・・・、でも私、その意味が解らなくて・・・。黙っていたらセックスを始めちゃったの。それが、わざと私に見えるように、それがすごくエッチな感じで私の方を見ながら・・・、『こんな風にセックスするのも楽しいのよ』って、言うの。だから、私たち夫婦の反応や返事次第では何か別な事を期待していたのでは・・・」
私たちがこの夜体験したことは、その後の夫婦生活に大きな影響を残したことは言うまでもない。
しかし、もし、隣室の非日常的な性行為を聞いただけなら、これほどの印象は残らなかったかもしれない。やはり露天風呂でその夫婦と出逢い、その男の勃起したペニスやセックスを見せられ、さらに、その男に体の全てを見られたことが陽子の脳裏に強烈なインパクトを与えたことは確かだった。
そればかりでは無く、私たち夫婦が他人の性的遊戯の対象とされていたことは、私たち〝夫婦の性〟に初めて〝他人〟が割り込んで来た事を意味する。
愛する妻が見知らぬ男の性的対象にされたことは不愉快だったが、それとは別な想いが私の心の奥深くで蠢き始めていた。
この体験は親友から指摘された〝私たち夫婦の問題点〟を解決するヒントになるかもしれない。

前頁 目次 次頁