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日記番号:1074

単身赴任と夫婦交際!そして今日

潮風 (四国)


  感想集

転勤辞令

 工事も終盤を迎え先が見えた来た、後2~3ケ月もすれば引渡しも完了するだろう。 協力会社もそれぞれ担当工区を終了し、引き上げ組が増えてきた、其れに伴い、打ち上げの会の出席も増え飲み会出席も多くなって、体調も不良気味?・・・
そんな日々を過ごしていたある日、一本の電話を受けた青野さんが
「栗原さん、お宅の本社から電話です」と言ってTELを廻してくれた。
「栗原君ご苦労さん、順調の様だね!」 常務の声だった
「あっ!御無沙汰しております、最終追い込みでバタバタしていたもので、申し訳ないです。」
「いやそれは良いんだが、今日は大事な話が・・・・非常に急で申し訳ないんだが、交代の代理人に川野君を送るから帰って来てくれないか?」
「えっ!それはまた???どう言う訳で?」
「いや、本当に急で申し訳ない話せば長くなるので詳細は帰ってから、悪い話じゃないので。」 「明日川野君を送る、引継ぎに一週間くらい在れば終わるかな?」
「もう終盤なので書類関係がメインなので大丈夫と思いますが・・・」
「じゃあ!すまないがよろしく頼む!」

 本当に急で意外な話だった。普通代理人を途中交代する事は、怪我や病気以外ありえない、怪訝そうな顔で電話を置いたのを見て、話を傍で聴いていた青野さんが
「何かあったのですか?」と聞いてきたが「ああチョット!」とその場を流した

 翌日早速川野くんがやって来た。30代半ば独身、彼ら同期組みではトップ組みで
切れ者、後を託しても心配ない、早速打ち合わせの席で
「何が有った??まったく訳がわからない??」 そう言うと、川野君はニコニコしながら
「栗原さんおめでとう御座います。御栄転ですよ」 それでも意味が解らなかった
「まだ発表されてないんですが、ある筋からの情報です。〇〇営業所の所長を兼務する××専務が社長の意向で本社に転勤します、その後任と言う噂です」
「でもあそこには、私より先輩や古株が沢山いるだろう」
「でも社長が役員会で栗原さんを行かせると言ったとか言わないとか???」
〇〇営業所は訳ありの営業所だった。 社長と専務がこの会社を起業した本拠地がこの営業所だった、会社が大きくなり西日本各地に展開する為今の県庁所在地に社長が率いて引越しして、起業した地を専務が率いて営業所としたのだ。だから他の営業所と比べて所員のプライドも高く、古株、古狸の巣と言ってもいい。

 その日の夕方事務所の皆を集めて事情を説明し、川野くんを紹介した、一様に驚いていたがが、私は内心帰れる喜びが在るのは本心だった。
 翌日の昼休みいつもの様に青野さんと二人で向かい合って給食弁当を食べていた
「御栄転だそうでおめでとう御座います」
「いやまだ噂話の段階で辞令が出たわけでもないので・・・」
「それに本当だとしても訳あり営業所なので先が思いやられます」
「本社では、栄転と言う名の左遷などと囁かれているそうです」
そんな話で場を濁したが、例の親方の「抱いてやってくれ!」の話から、妙に意識して、今までと違い、話しづらかった。
「職場の目もあり、花火大会も誘って戴きながら御一緒できなかった、お食事も出来なかった、私の立場もあり許してください」次回お会いした時は、肩書きもありません、今回のお詫びにお食事御馳走させていただきます。」そう言うと、丸い瞳をニッコリ輝かせて
「ほんとうですか!嬉しいです。でも帰られたらもう、もう二度とお会いする事は無いでしょうね。それは解っていても栗原さんのお心遣いの言葉、とっても嬉しいです。」  本当の処をズバリ突かれて次の言葉は出なかった。

 一週間はあっと言う間に過ぎた、 現場事務所を去る日は来た。
広い駐車場に事務所の全員、各協力会社の事務所からも見送りに出てくれて、両サイドに並んでくれて拍手や手を振り見送ってくれた、その中をゆっくり車を走らせ
門まで出た、最後に川野君が居た「あと頼むよ!」「任せてください!其れより栗原さんも古狸の巣大変でしょうけど頑張ってください。」笑って握手して分かれた
 約一年間なじみの顔を見ながら門を出た、おそらくもう顔を合わすこと無いだろう皆さん、何度経験しても寂しい瞬間である。」
 しかしその沢山の顔の中に、青野さんの顔は最後まで見当たらなかった。!!

 

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