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日記番号:1074

単身赴任と夫婦交際!そして今日

潮風 (四国)


  感想集

親方の相談

  三日間の夢も覚め、現実の月曜日が戻って来た、現場も工期終盤を向え早い協力会社は自分達の受け持ち工区を終え引き上げの準備に入っている会社もある。
もう2~3ケ月も在れば引渡しも出来るだろう、長かった赴任生活も終わりに近づいてきた。
そんなある日、地元の協力会社の親方さんが話し掛けて来た。
 「代理人、今週の土曜日お時間在りますか?」
「はい!なんでしょう?」
「いや、他でもないんですが、私どもの工区もほぼ完成です、近日中に引き上げ出来ると思います」
「いやあ!長い間ご苦労様でした」
「そこでなんですが、土曜日職人さん達の慰労を兼ねて打ち上げの慰労会をしようと思うのですが、代理人も是非出席お願い出来ませんか?」
「解りました!そう言う事なら喜んで出席させていただきます。」
そんな訳で出席を約束してその場を別れた。

 その日は土曜日とあって各社作業班も定時で現場から引き上げて来た。早めに現場事務所を閉めてマンションに帰り私服に着替え親方から聞いていた会場に向った
少し早めに着いたがもう既に沢山の職人さんが集まっていた、 時間になるとザワザワしていた会場も親方さんの一声でシーンとなった
親方さんの工事終了の報告と皆さんの労をねぎらう挨拶があり、私の方にも挨拶の矛先が廻って来たので、受け持ち工区の早期工事完成と無事故の感謝を告げて
挨拶とした、 見慣れた顔の職人さん達が次々とお酌に来る、地元の土地柄も在ってか皆さん酒豪ばかりで、まともに付き合っていたら、此方の体がもたない。
それでも相当酔っ払った頃に適当に場を見計らって会場を離れ窓際のテーブルで酔いを醒ましていた、
暫らくすると、親方さんが近づいてきて、テーブルの前に着いた、
「呑んでもらっていますか?」 「名物の皿鉢料理も充分召し上がってください」
「ええ!もう充分頂いています。皆さん酒豪ばかりで、まともにお付き合いできません」
それを聞いた親方さんは、独特の豪快な笑いをしていたが、突然まじめ顔になって、声を潜める様に
「実は代理人!御相談があるのですが」
「はい!なんでしょう?」  こんな時は得てして次の仕事の営業的な話と決まっているのですが、そんな話と想像しながら次の言葉を待った。
「お宅の事務所にいる事務員の青野さん、代理人はどう思われますか?」
意外な質問だった
「どうと言われますと?質問の意味が・・・事務員としては完璧です、頭の回転は速い!仕事にも無駄が無い、」
「この現場限りのパートと聞きました、後の採用をお考えでしたら、お勧めですよ!」
そんな答えをすると
「そんな事は解って居ます、彼女の父親とは何十年の古い友達です、彼女は幼い頃から見ています知っています」
「そうじゃなくって、女としてどうですか?と聞いたんです!」
「ああ!そう言うことですか、そりゃあ見ての通りベッピンさんだし、良く気が付くし、優しいし、」
「旦那さんと別れて実家暮らしと聞きました。いい縁談があれば是非お世話してあげてください」
「解ってないなあ!!だから一年近く一緒に仕事していて気が付かないのか!!」
言っている意味がなおさら良く判らなかった
「彼女はね、可愛そうなんですよ、旦那が5年ほど前、女をつくって逃げたんです。幼い二人の子供を連れて実家に帰って来たんですが
このあたりでは、田舎なもので二人の子連れとなれば再婚の話も無い、だけど彼女も既に男を知った女なんですね、」
「都会なら彼氏も出来やすいでしょうが、此処ではねえ! おまけに彼女の実家はこの辺りでは指折りの資産家であって、其れがさらに
足かせになって、この辺りの男どもは敬遠して通る・・・・」
何が言いたいのかそれでも良く判らなかった
「ずばり言います!あの子を抱いてやってください!!」
「えっ!!!」 次の言葉が出なかった
「あえて栗原さんと呼ばせてもらいます、」
「栗原さん、あの子が積極的に出ているの、解りません??」
「私は最初の頃から気づいていました、傍から見てい、いじらしいんです!!」
「あなたに奥さんが居ることは知っています、そんな堅い話じゃないんです、この辺りでは昔から後家さんが、旅の男に抱かれるのは
罪ではない・・・などと伝説の様な話も残っています、 あの子も栗原さんの家庭を壊すような子ではありません、それは充分心得ています。」
「まあ色々訳の判らん、ゴタク並べましたが、酔った男の戯言と頭の隅にでも残していてくれたら嬉しいです。」
そう言って親方は呑み掛けのグラスを片手に宴席に戻って行った。
残った私は、あまりにも衝撃的な話に、酔いがいっぺんに覚めたような・・・・・・いや悪酔いした様な複雑な気持ちで一杯だった
 さりとてこの現場を終えて帰るまでに彼女を抱こう、などとサラサラ思っても見なかった
しかしこの話が何年も後になって私の心に突き刺さる事に成ろうとはこの時は思っても見なかった。



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