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日記番号:892

愛する妻を堕した男

志保の夫(首都圏)


  感想集

20.バスタオル①

志保は時々私の思考の範囲を超えて私を驚かせることもある。
少女の幼さと大人の賢さを合わせ待っている。それが19才と云う年齢によるものかどうかは判らない。
ホテルの部屋で弁当を食べると云う選択肢は考えもしなかった。
志保の言う通り、その方が一緒にいる時間が長くなるし半分ずつ食べることは二人の距離も縮まる。何よりいいのは他人の目を気にしなくていい事だ。アベックが人前でいちゃつくのはあまりいい光景ではない。本人たちはお互いの愛情表現なのだろうが、それは2人だけの事だ。
私を喜ばせたのは同じ色のビキニショーツとビキニブリーフを揃えたことだ。レジで女物の下着と同じ色の男物の下着を並べた時、さすがに私は恥ずかしかったが、志保は平然としていた。
ホテルに着くとロビーは観光客で混雑していた。
このホテルは立地場所もよく建物の外観もモダンなので、特に若い女性やアベックに人気があった。作品名は忘れたが、<愛妻日記>日記にもこのホテルが登場したことを憶えている。
北海道観光のトップシーズンと云うこともあり、ロビーはほとんど女性客で占めている。ダブルの部屋が空いていたのはラッキーだった。
ホテルの部屋に入ると、志保は窓の側に行く。
「わぁぁぁ、とっても素敵、ロマンチックだわぁ」
窓の下には小樽運河が見える。その両側にガス灯のクラッシクな街燈が黄色い光を放っている。恋人同士が肩を寄せ合いながら歩いているのが見える。遠くには漁船の明りも瞬くように見える。このホテルが女性に人気なのはこの夜景が寄与しているのだろう。
私は志保の後ろから肩を抱く。昨夜、妄想した野島の姿を自分に重ねる。
振り向いた志保を抱いて唇を重ねる。ちょっと硬くて甘い唇。
ディープを求めると志保が唇を離した。
「もう少し待って・・・、私、先にシャワーを浴びたいの」
私の腕をすり抜けると、リュックサックから化粧ポーチだけを持ってバスルームに行った。
バスルームからシャワーの音が聞こえてくる。これがラブホテルなら一緒に入ることも出来るが、ホテルのバスルームは狭く、浴槽も小さいので入りづらい。
果たして志保がどんな格好で出て来るのか楽しみだ。理想的にはバスローブを巻いた姿を見たいが、二人の関係は未だそこまでいっていない。
志保にはこれまで何度か驚かされたが今度は私が驚かしてやろうと考えて、着替えることにした。
志保は、トランクス姿は好きじゃないと言っていたので、さっきスーパーでかったビキニブリーフに穿き替えてホテルの部屋着を羽織ることにした。陰茎はすでに勃起しているので、ビキニブリーフの収まりはあまりよくない。しかし、トランクスと違いその状態が誇張されている。肩からバスタオルをかける。私の姿を見たら、その想いを理解してくれるだろう。
食事の前に抱擁の続きをするか、食事の後にゆっくりすべきか迷う。食事後の場合は食べ物の匂いを女が嫌がることを知っている。バスルームから洋服のまま出てきたら食事をしよう。それ以外の姿、デニムのショートパンツを脱いで出てきたらベッドに誘う。
ベッド脇のナイトテーブルの上にスキンの箱を置く。これを見た時の志保の反応が楽しみだ。
部屋の明りは部屋の隅のスタンドライトだけにして待つ。
やがて、シャワーの音が消えてバスルームのドアが小さく開いた。
志保が様子を窺いながら出てきた。その姿を見て驚いた。
えっ!バスタオル?今回もやっぱり志保が仕掛けてきた。
「お待たせ!どう、セクシーでしょう?うふふふ」
「え、え、え、だよ!」
立ち上がって、抱こうとすると、「だめ!見るだけ」と逃げる。
「もっとよく見せてくれよ。未来の花嫁さん」と大きく腕を広げて呼ぶ。
「だめ!本当に見るだけだってばぁ・・・」
私は両腕を広げたまま少しずつ距離を縮めて追い詰めてベッドの方に追い詰める。
追い詰められた志保はベッドの上に逃げる。結果として又しても私の方が志保に策略にはまったようだ。
ベッドの上で抱き合う。それが当然の行為のように唇を重ねる。
「バスタオルを取ってもいいかい?」
「うふふふ、がっかりするかもよ」
「志保のオッパイまだ見ていないから・・・」
「前に見なかったの?私が貴男に抱っこされて眠ってしまった時に・・・」
「僕は真面目だからそんな卑怯なことはしないよ」
「変な人・・・。あの時何もしなかったの?」
「変な人じゃないよ。君がぐっすり眠っているのに、そんなHな事はしないよ。それとも眠っている間に何かしてほしかったのかい?」
「そんな意味じゃ無くて、男の人ってチャンスがあればHな事をすると思っていたから・・・」
「それは志保ちゃんの思い過ごしだよ。全部がそんな男じゃないよ。でも、どちらかと言えばそんな男の方が多いかもしれない」
「省吾さんって優しいのね。だから、私・・・好き!大好き!」
「バスタオル、とっていいかい?」
黙って頷く。
バスタオルに指を掛けると、私の顔を見つめる。
「あっ!またやられた。騙したな?」
「だから、『がっかりする』と言ったのに・・・」
バスタオルの下には下着を着けていた。
初めからそうするつもりだったのか、勇気が無かったのか、は判らないがたぶん後者だろう。たとえそうだとしても失望はしていない。なぜなら彼女自身も次のステップを考えている証しだから。

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