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日記番号:844

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幸治(都内)


  感想集

5章-3

お互いに隣室の客同士と分かっていても、一般的には気が付かない振りをするのが礼儀だと思う。
「はぁ、そうですか・・・、あまり分かりませんでしたが・・・」
「いやいや、気が付いたと思いますけど、他のお客さんと親しくなりまして、ちょっと一緒に遊んでいたんですよ。実はここの露天風呂で一緒になりまして、色々お話をしていましたら同じ趣味と判りまして、意気投合しまして・・・」
私がとぼけて会話を敬遠するが、男は勝手にしゃべり続ける。
「アンタ、そんな余計なことを言わなくても・・・、この人、本当にアレが好きで・・・」
彼の連れも話好きらしく、否定はしないばかりか同調する。不思議なカップルだ。
「夫婦を長くやっていると刺激が欲しくなるんですよ。たまには隣のご飯も食べてみたくなるんですよ。ちょうどそちらの趣味が一緒の夫婦と偶然に出遭いましてねぇ。まぁ、同じ趣味を持つ者同士は何となく判るもんなんですけど、はははは」
「はぁ、そうですか、私たちにはよく分かりませんが・・・」
この男は私たちに何を言おうとしているのか、うまく返事ができない。陽子は私の背中と岩の隙間に隠れるように小さくなっている。
「これは一般論ですが、混浴の露天風呂に一緒に入る夫婦は刺激を求める傾向にあるようで・・・、わし達も、まぁ、どちらかと言うと〝好き者夫婦〟と言われるかもしれませんなぁ、はははは」
この夫婦の考え方からすると、私たち夫婦も彼等と同類と見られたようだ。
「体が熱くなりましたので、ちょっと失礼させていただいて・・・」
男は湯から上がって、私たちのすぐ前の岩の上に腰かけた。
「きゃっ!」
陽子が小さな悲鳴を上げる。
男の下腹部にはペニスが隆々と勃起していた。
「アンタ、そんな物を・・・、手で隠しなさいよ!奥さんがびっくりするでしょ!」
「まぁ、そう言わなくても、ここは混浴の露天風呂や。言わば裸の社交場のようなもんだよ。混浴温泉と看板を掲げている所は何処でも老若男女が仲良く話を楽しんでいるよ。それが日本の原風景でもあり、〝温泉文化〟のいい処でもあるんだよ。そうでしょう?ご主人」
「はぁ、そうですねぇ・・・」
「ただちょっとセガレが・・・、実はこの年になると親の意思が伝わらなくて、医者に相談したら〝レドビア〟と云う薬をもらいまして、夜に飲んだら効いている時間が長くて、ちょっと刺激しますとこんなになりまして中々縮まらんのです、はははは。若い人はいいですねぇ。薬に頼らんでもいつでも出来るから、羨ましいですよ」
男はそう言いながらイチモツを誇示するように手で持ちあげた。

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