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小話番号1013
 ★
パートさん

駄目リーマン (内緒)   2016-03-20
  感想集

私は、アパレル関係の仕事をしている普通の会社員です。
アパレル関係と言っても空調の効かない倉庫で検品ばかりしていますがw
こんな退屈な仕事でも楽しく続けられているのはパートさんたちのおかげです。
上司が許可してくれたので、試しに小話に投稿してみます。

私は、本社では営業職でした。
この業界、とにかく残業が多くて自宅と会社の往復でした。
当然、遊べないので出会いなどありません。
それは同じ業界で働く誰しも似たようなものだったと思います。
出会いがなければ自然と身近にいる人に‥
まあ、当たり前のことでしたが私も新入社員の女の子に手をつけてしまってw
気がつけば同じフロアの女性社員と一度は寝たことのある有様になってしまいました。
当然、バツが悪いのなんのって気がつけば場末の支店に異動でございますw

朝から晩まで検品検品の連続‥
忙しくはないですが拘束時間が長いのなんのって。
トラックが遅れて入荷してくるのをパートさんとくっちゃべりながら待って1時間。
検品と梱包で20分。
出荷したら、また次のトラックを待つのが日が暮れても続きました。

アパレル関係といえば華やかなイメージがあるのでしょうか?
30代〜40代前半までの主婦の方が多く勤務していました。
私は、おしゃべりなのでパートさん達とくだらない話ばかりしていました。

旦那さんの愚痴から、別のフロアのパートさんの悪口までネタには困りませんでした。
私の上司も同じ営業畑から左遷されてきた可哀想な人で不思議と馬が合いましたw
最寄りの駅ビルにジムがあり、上司のご機嫌とりで仕事が終わるとお付き合いしました。

46歳とは思えない引き締まった体と清々しい笑顔でトレーニングをする上司‥
私も負けじと頑張りますが、やはり毎日コツコツ続けている上司には勝てませんw

そんなこんなで、新しく扱う商品の関係で新しく小さな倉庫が建つことになりました。
3F建てで、半自動のリフターを完備した人に優しい設計ですw
立ち上げで来ていた本社の技術が帰ってしまったので上司が引き継ぐことになりました。
ヘルプになぜか私が付くことになりwあ〜、またか〜とかお互いに笑ったものでした。

独立採算に近い形をとっている社風なので、毎月のノロマをこなせば以前よりは楽でした。
経費も初年度だったこともあって、ほとんど使わないのに多めに付いていました。

1Fは、トラックの運ちゃんがダンボール箱で3箱から4箱ぐらいを乗せて出て行くスペース。
2Fは、私が1Fに自動で降りていくリフターにダンボールをセットするスペース。
3Fは、ダンボールに商品を詰めるのと仮置きするスペースで上司が担当していました。

だんだんと軌道に乗ってくると手が足りなくなりました。
そこでパートさんを2人ほどヘルプに呼ぶことになりました。

誰が来るのかなと思っていると意外なふたりがやってきました。
大野(仮称)さんと、野村(仮称)でした。
私は2人が苦手でした。
仕事はできるんですが、真面目で、そしてでかいw
私が164センチ、上司に至っては160センチしか身長のないちびっ子ですw
大野さんと野村さんは、同じ高校でバレボール部だった頃からの付き合いらしく‥
女性で180センチとかありえないのに、それが2人もいるのですw
お互いに子供が小学校に上がったのでパートに来てくれているのでした。

上司は、趣味と実益を兼ねて株をやっていました。
どこから聞きつけたのかパートさん達で、お小遣い欲しさに株をしている方が何人かいて、
上司にアドバイスを聞いてるのを以前に見たことがありました。

ジーンズのお尻が、はちきれそうな大野さんが上司に何かを確認しているようでした。
ロングスカートの裾をなびかせて野村さんは上司を睨んでいました。

私は良く分かりませんでしたが、上司が100円玉をポケットから取り出しました。
「じゃ、決めて下さい。」
そう上司は言うと、大野さんと野村さんはコソコソと話し合い始めました。
結局、野村さんが表で大野さんが裏と上司にそれぞれ告げました。
私は良く分からないままコインが宙に舞って、床に落ちたのを見ているだけでした。
「あっ」
大野さんが手で口を押さえました。
「大丈夫‥マコ‥大丈夫よ‥」
野村さんは、力強く言うと上司の後をついて3Fに上がって行きました。

それからは、特に何も変わったことがなく仕事を淡々とこなす毎日でした。
上司も忙しいのか昼ご飯の時以外は、下のフロアに降りてこなくなりました。
私と大野さんは、天気の話題とかどうでもいいことを少し話すと無言で仕事する毎日でした。

ひとつ気になったことは、壁にかけてあるカレンダーに丸がつけてあることでした。
再来月の予定を確認している時に私が見つけたのでした。
同じフロアには大野さんしか働いてないハズなので不思議に思って聞きましたが、
大野さんは知らないとしか答えませんでした。

ひと月が過ぎた頃に時々、変な声が聞こえてくるようになりました。
うなり声というか、鳴き声というか‥
最初は猫でも迷い込んだのかなと思っていましたが日に日に大きくなっていきました。

不思議なことにその声が聞こえると、辛そうな表情をして大野さんの手が止まるのです。

ふた月が過ぎた頃に、いよいよそれは無視できない大きさと頻度になっていきました。
カレンダーの丸印が来週に迫ったある日、私は意を決して大野さんに言いました。

「どうやら3Fから聞こえるみたいだけど、間違いがあったらいけないから‥」

私が、そこまで言うと大野さんは「やめて!」と声を荒げました。
普通でないと思った私は、大野さんに何があったのか尋ねましたが下を向いたままでした。
埒があかないので、私は3Fに静かに移動し始めると大野さんが手を掴みました。
私は、その手を強引に振り解くと3Fに向かいました。