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日記番号:892

愛する妻を堕した男

志保の夫(首都圏)


  感想集

9.志保の秘密①

キスと言ってもほんの少しだけ唇の端に触れただけのことだったが、唇を離した後、志保は大きくため息をついた。
「これで・・・、私・・・、浅井先輩の彼女になったのね・・・」
そうつぶやくと、またフーッと深呼吸をした。
「中川さん、恋人同士は“先輩”なんて呼ばないよ」
「なんて呼べばいいのかしら?浅井さん?省吾さん?ワァー!何だか恥ずかしいわ」
「名前でいいよ」
「せんぱ・・・、あっ、いけない!しょう・・・ご・さん・・・、私のことも・・・、名前で呼んでくれますか?」
志保はしどろもどろで言う。その話し方が如何にも純粋な少女の可愛いと思った。
「志保ちゃん・・・かな?」
「わぁ、嬉しい・・・。でも、私、やっぱり浅井さんって呼ぶことにするわ。だって、クラブで省吾さんって呼んじゃいそうだから・・・」
「恋人かぁ~。ああ、良かった・・・」
「何が良かったんだい?」
「それは・・・、ないしょ、うふふふ・・・」
志保は悪戯っぽく笑った。
この後、もう一度キスをして札幌に戻った。

帰りの車の中で志保は意外な事を告白した。
「さっきの内緒の事だけど志保ちゃんの彼氏としては気になるねぇ。何がそんなに良かったんだい?彼氏に隠し事はいけないよ」
「隠し事かぁ・・・、そうねぇ、そうよねぇ・・・」
少し考えてから話を始めた。

「私、とても悩んでいたの。3年生の野島さんの事なんだけど・・・、入部して2ヶ月経った頃からかなりしつこく誘われていたの。でも、私、入部して間もなく女子の先輩から野島さんはプレーボーイだから気を付けるように聞いていたの。だから、なるべく避けるようにしていたのよ」
野島と云う男はとにかく女好きで<三度の飯より女の方が好き>と部員なら誰でも知っている。毎年、女子の新入部員がくると次々と声をかけてモノにする事を生甲斐にするようなスケベな奴だ。当然、クラブの規律違反なのだが、それは部活の範囲内のことで、それ以外は本人同士のプライベートなことで、女子部員が特段問題にしなければ注意程度はするが退部等の処分は出来ない。野島と云う男は女性関係が派手な割には女子部員から苦情が出ないのは彼の特殊な才能なのかもしれない。女子部員も彼の派手な女性関係を知っていながら誘いに乗るのだから、一方的に彼を責める訳にもいかなかった。
その他にもテニス部が彼に甘い理由もあった。それは、彼の父親が経営する会社から毎年多額の寄付金をもらっている。体育会系の部活には文化系とは違い、遠征費用等多額の活動費がかかる。大学からの助成金や個人の部費だけで運営すること非常に難しい。
野島が処女の志保に大いなる興味を持って誘惑していることは、同じクラブにいる者として当然想定している。もし、私が志保とこのような関係にならなかったら、特別に意識することも無かっただろうし、処女の新入部員がこの世から1人消えたとしか思わなかっただろう。
「夏休みに入ってからも、ホテルのプールやジャニーズのコンサートにも誘われたの」
「それで、一緒に行ったのかい?」
「ええ・・・、プールはお断りしたけど、コンサートは行ったわ」
これは何度も聞いた奴の手口だ。特にホテルのプールは部屋を用意して着替えるので成功率が高いと豪語していたし、処女の子はジャニーズのコンサートに誘うと100%乗って来るし、コンサートは精神的にハイになるので、その後ホテルのレストランかバーで酒を飲ませると拒否されることは無いと自慢していた。

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