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日記番号:1073

淫の刻印

アスカ(京都)


  感想集

47 大阪、道頓堀

龍と典子は、道頓堀を心斎橋へ歩いていた。週末の道頓堀は、仕事帰りの人や中国人観光客で溢れている。蟹やフグのディスプレイに見上げ、写真を撮っている。典子は、龍の手をとり、迷子にならないように、ついていく。

「大阪は、久しぶりなんやろ。」
「結婚前は、阿部野橋に住んでたから、10年ぶりね。」
典子は、黒地のニットのミニのワンピースで、体のラインが、強調され、太股も、かなりキワドイ所まで、見え、通りすがりの男は、振り向いていた。
髪は、長髪からショートボブに切り、35歳と言っても、20歳台で、十分、通用する。

龍は、黒のスーツにノーネクタイ、傍目には、ホステスが、同伴出勤の前に、食事に行く雰囲気だ。人の流れに逆らいながら歩いているが、人の流れの方が、龍を避けるように、存在感がある。別にチンピラのように肩を怒らせて、歩いているわけではないが、何か、オーラのような近寄りがたい空気を龍は、放っている。

ロッテリアの前で…
「珍しいな…」鋭い目付きの男が、行く先を塞ぐように、立ちはだかった。後ろには、4~5人の男達が、控えていた。
「たまには、のんびりしたくてね。」
「どこの店の子や?綺麗な姉ちゃんやな。」
「オレの身内や。あかんか?連れてあるいたら。」
「えらいベッピンさんやないか。働くんやったら、ええ店、紹介するで。」
「ことわるわ。使いたおされて、終わりやろ。」

背後の男達が、一歩詰め寄る。一人は胸の内ポケットに手を入れた。
「アホ~やめとけ…お前ら、束になっても、負けるわ。ぼこぼこにされるわ。すまなんだな龍。珍しいから声をかけただけや。」

「やなヤツ~大嫌い~あんな男」
「でも、やなヤツでも、仕事なら、あんなチンピラにも、抱かれるんやで…」
「そうやけど…」

龍は、余計な話しは、しない寡黙な男だった。気がのれば、いくらでも話すが、チャラチャラした男では、なかった。ペチャペチャ話し、驚いたり、泣いたり、まるで、若い娘のように、跳び跳ねる典子を、龍は、優しいまなざしで、見守っていた。

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