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日記番号:844

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幸治(都内)


  感想集

12章-3

小野氏は年末年始をハワイで過ごすそうだが、独り者の彼が1人でハワイに行くとは思えない。
「小野さんのハワイの休暇はやはり美人の人妻さんと?」
「まぁ、そうでしょう。中年のオッサンが1人でハワイへ行っても洒落にならんでしょう?たぶん、前半と後半で相手は違うと思いますけど・・・」
「いやぁ、すごいですねぇ。ダブルですかぁ・・・、でも年末年始のハワイはホテルの予約が大変でしょう?」
「いやぁ、彼の場合はまったく心配ないんです。彼はハワイにもコンドミニアムを幾つか所有しているんですよ。小野さんは不動産屋ですから、色々と手を伸ばしているんです。要するにコンドミニアムの所有権の一部を買って、それを賃貸に回すんですよ。最近は長期滞在したいお客が多くなって、別荘感覚で滞在できるし、料金もホテルより割安なので人気があるそうですよ」
「そうですか、ビルの賃貸だけじゃないんですね?」
「貸しビル業だけでは現在以上の利益を上げることは難しいし、いずれは建替等の問題も出て来るので今のうちから安定した利益を確保しなければならないそうです」
その話を聞いて小野氏はその辺りでうろついている不動産のオヤジでは無いと思った。小野氏は複数の人妻セフレとハワイで正月を過ごすと言う。それだけの男のパワーと財力が有しているのだろう。
「小野さんは軽井沢や伊豆に貸別荘を持っているんですよ。バブルの頃に〝セレブ〟を気取っていた〝バブル成金〟がバブルが弾けてカネに困って別荘を維持できなくなって手放したんですよ。小野さんはその中から優良物件を二束三文で買って、それを貸別荘にしたんです。小野さんの賢いところは『安ければ何でも買い漁る』と言うような事はしないんです。あの頃は全国的にリゾート開発で辺鄙な田舎にも別荘村が造成されましたけど、ほとんどがゴースト村になって、今じゃただでも買い手がつかないそうです。小野さんはそう云う物件には絶対に手を出さないんです。私も触手を伸ばした物件があって相談したことがあるんです。その時も即座に『止めといた方がいいですよ』と言って反対したんです。そのお蔭で損をしないで済みました」
「小野さんが持っている別荘ってとてもいい場所にあるんですよ」
美紀ママが私とマスターの話に割り込んで来た。
「以前、軽井沢の別荘に招待されたことがあるのよ。駅から車で15分くらいで街の中心からも近いの。だから、食事を作るのが面倒な時は出かけたり、出前を頼むことも出来るの。別荘の間取りは利用人数に合わせて選べるし、それに設備や調度品も素敵なのよ。たぶん、小野さんは家族よりもカップル客をターゲットにしていると思うわ。私たちが泊まった別荘は2LDKだったけど、寝室はダブルベッドで別の部屋は和室、それに浴室は庭に面していて半露天の造りなの。如何にも女性が喜びそうな別荘だったわ」
「美紀ママの印象は正しいと思いますよ。小野さんがポツリと言ったことがあるんです。『家族は高い料金設定は出来ないけど、カップルはプライバシーと女性に受けるインテリアにすると高い料金設定しても需要はある』。一般的に宿泊場所を選ぶ場合は女性に主導権がありますから・・・。それを聞いた時はさすがに女性の心理をよく知っている小野さんと思いましたよ」
マスターは『女性の心理をよく知っている小野さん』と言った時、ニタリと意味深な顔で私を見た。

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