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日記番号:892

愛する妻を堕した男

志保の夫(首都圏)


  感想集

42.心と肉体①

それから、2日後に来た志保のmailはそれまでも内容とは違った生々しい言葉を綴られていた。それは私たちの愛の形や愛のあり方に大きなインパクトを与えた。

≫短いお正月休みも終わり今日から出勤しました。
今日、久しぶりに陽子から連絡があり仕事の帰りに新宿で会いました。陽子も今のところ真面目に仕事をしているようです。その後、貴男との事も話題になり、ずっと会っていないと言うと、とても心配してくれました。陽子は私たちの仲を取り持ったのは自分だと今でも思っているようで、とても親身になってくれます。
そこまでは普通の親友の再会でしたが、貴男も良く知っているように、陽子は異性関係について彼女は独特の考えを持っていて、私の悩みを聞いて、また驚くような事を提案してきました。
それは、「本命の彼とは別に他の男性の友達を作った方いいよ」と言うんです。確かに彼女は学生のころから数人の男友達に囲まれていて、それぞれ彼女の気分や目的に応じてお付合いしているようですが、私にも遊ぶ相手を作るようにと薦めるんです。
陽子も父親が経営する会社の社員として勤めていますが、結婚相手も決まって25才になったら結婚することになっていると言っています。結婚相手も、陽子が数人の男性とお付合いしていることを知っていて、でも、何も言わないそうです。彼は陽子に「結婚式を挙げるまではお互いに自由でいようよ。ただし、お互いに別の相手の子供は作らないことが最低条件」と、言ったそうです。
陽子は前から、「志保のような女子は〝昭和の化石〟だよ。今どき一人の男だけで満足している女子なんかいないよ。一般女子が結婚までに体験する男性の数は平均で4、5人だからね。その中から相性が合った人と結婚するのよ。それでもだめだったら離婚して新しい男性を見つければいいのよ」と言いました。
陽子のお話しは学生時代から聞いていましたから特別驚きませんし、私の女友達の多くも複数の男性と経験していますから特別新しいお話でもありません。
でも、今回は胸にグサリときました。だって・・・、とても寂しくて、寂しくて、独りでいると辛いんです。志保の心の中には省吾さんしかいません。でも・・・、時々女の悪魔が囁きかけるんです。
陽子は「その気になったらいつでも相談に応ずるから、それにあなた達2人の結婚を邪魔するような男は紹介しないし、あくまで志保が結婚するまでの一時的な遊び相手だから」と言うんです。
気持ちの中では「私の彼は省吾さん一人だけ」と、思いながらも「寂しい時のお話し相手だけならいいかな?」と、心の奥の悪魔が囁きに迷うことがあります。
ごめんなさい!こんなダメな私を叱ってください!
愛する貴男の心の妻 愛を添えて  志保≪

このmailには私も驚いた。
そして、何度も読み返す。初めは、<あの陽子が余計なお世話を!>と、思ったが、よく読んでみると、ただの余計なお世話とも思わなくなってくる。
今、志保が精神的寂寥よりも肉体的欲望に苦しんでいることは遠くにいてもよく解る。それが情緒不安定の原因になっている。遠くにいる私には精神的な支えはできるが肉体的欲求には応ずる術もない。親友の陽子は同じ女として志保の悩みをよく理解している。陽子の提案はある意味、合理的な考えであることは否定できない。普通の恋人同士なら直ちに否定的なmailか電話をするだろう。しかし、志保からのmailは私の特殊な性癖を刺激する内容でただちに否定しきれない。
志保と私の間に他の男が割り込んでくる。それは私にとって妖しく甘味な麻薬に似ている。
もし、志保が精神と肉体を切り離して、すなわち心の愛と性的快楽を切り離して考えることができる女性ならば、これは私たちの愛の妙薬になり得る。
しかし、心の愛と性的快楽を切り離すことが出来ずに性的行為が続くと、相手の男に心まで持って行かれる恐れがある。これは私たちの愛の崩壊を意味する。
遠距離恋愛のカップルが離別に至る最大の理由は愛情と性欲をコントロール出来ないからだ。男も女も寂しさに耐えきれずに他の出会いを求めてしまう。特に性的快楽を知っている娘は精神と肉体の寂しさを同時に感じる。
もし、肉体だけ寂しさを埋めてくれる相手がいたら?
しかし、この考えを成功するには相手の男性のパーソナリティに寄る処が大きい。
志保の気持ちを安定させて、しかも性的にも満足させてくれる男。しかも、その時期が来たら静かに消えてくれる、こんな理想的な男が果たして存在するのだろうか?
私はこれまでの少ない人脈の中で考える。
ある程度の年齢がいっている、30代後半から40代。妻子があった方が良い。独身は独占欲が強くなり、最後は結婚を求める。やはり、最も重要な条件は志保と精神的、肉体的相性がいい男。
できれば、志保と私とその男だけの秘密にした方が良いのだが・・・。
これらの条件を考えると相当難しい。そんな相手が簡単に見つかるとは思えない。
しかし、もしも・・・、もしかして・・・、そんな男が現れたとしたら・・・。

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