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日記番号:844

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幸治(都内)


  感想集

10章-4

陽子は決して男性に興味がない訳では無いことは知っている。
陽子がまだ高校生や大学生だった夏、何度か一緒に都内のホテルのプールに行ったことがあった。陽子の父親の関係で無料のプール券をもらって行った。豊島園のようなプールは親子連れが多いが、高級ホテルのプールは大人の男女がプールサイドでゆったりと寛いでいる。その人達はファッショナブルで格好が良い男女が多い。私はやはり女性に、陽子は男性に視線が行く。いつもその後でケンカの種になるのだが、ビキニを着た美しい女性にはどうしても視線が向かうのは止められない。陽子も同じように背が高く少し日に焼けたボディが引き締まった男性には興味が深々だ。ただ、同世代の若い男性よりやや年長の男性を見ている方が多い。(陽子はやはり女の子なんだなぁ)と感じたことがあった。それは30代くらい男性が着用していた水着が競泳用のビキニ型でプールから上がった時にペニスの形がくっきり見えたことがあった。陽子はサングラスをしていたが、視線は明らかにその一点に集中していた。その男はプールから上がると中年のオバサンの隣のチェアに寝ころんだ。その様子からして親子には見えなかった。陽子と目が合ったようで、その男がこちらに向かって小さく手を振った。
その事を言うと、陽子が向きになって言い返したことを今でも憶えている。
私には、陽子は父親が大好きのファザコン少女のイメージがある。それは父親が38才の時に生まれて可愛がられたことが影響しているらしい。結婚した後でも私が嫉妬を感じる程にベタベタすることもある。
そう考えると、陽子はどちらかと言えば中年男性好みかもしれない。それを考慮すると、平日の昼間にフィトネスクラブで出逢う中年男性については要注意だ。フィトネスクラブはプールやジャグジー、サウナがあり、裸に近い格好をした男女が接近する場所はいくつかある。しかも何回か顔を合せていると自然に親しく会話を交わすようになる。平日の昼間は男が有閑マダムを誘うには絶好の場所である。
不妊治療を諦めてからしばらく夫婦関係が希薄になっていたが、私は夫婦の営みよりも会話の中から妻の心の動きを捉えるように心掛けることにした。温泉旅行もその方法の一つであった。
私の不安の一部は当たったがそれも直ぐに解消した。
1人の中年男に誘われたことがあったらしいが、他のマダムから要注意人物として予めアドバイスを受けていたので、きっぱり断るとその後誘われることも無く、それから間もなくその男も来なくなったと言う。
その他に陽子が気になる男がいるかどうか聞いたが皆メタボ中年族でまったく興味を惹く男性はいないとあっさり答えた。
こんな日々を過ごしていた時にあの山間の温泉旅館での異常な体験をしたのだった。
私があの露天風呂事件に強い関心を持った理由は、陽子が〝男のワクチン注射〟を体験するチャンスだったかもしれないと思ったからだ。
交通事故のような想定外のセックスも他人体験に変わりは無い。感情が伴わないだけ心の傷は浅いはずだ。
しかし、それでは何かが違う・・・。

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