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日記番号:844

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幸治(都内)


  感想集

7章-3

小野氏は私の顔を見て低い声で話す。
「最初に断っておきますけど、私は決して亭主族の敵ではありませんからね。強引に奥さんを誘惑して旦那さんから奪うことはしていませんから、誤解しないでください。まぁ、どちらかと言うと、ちょっと寂しがり屋の人妻さん達に夢を与えるボランティア活動をしているようなものです」
小野氏は微笑みながら、私をチラリと横目で見て言い放った。
それを聞いて内心(イヤミな男だな)と思った。
「不倫や浮気をしている奥さんはどんな人達なんでしょうね?」
私はもう少し詳しく知りたいと思い、ツッコミを入れる。しかし、彼は私の質問を軽くいなすように逆に聞いて来る。
「失礼ですが北野さんはお幾つですか?」
「今年37才ですけど・・・」
「そうですかちょうどバブルの後期に青春を過ごされた世代ですね。今、浮気や不倫されている奥さん達もこの世代の人達なんです。その前の世代は良妻賢母型で家庭を守る専業主婦の方が多いので浮気をする人は少ないと思います。もっともこの年齢の人はいわゆる熟年世代ですので出逢いの機会も少ないかもしれませんが・・・。この後の世代はバブルが弾けて不況に陥って、それから日本の社会全体が沈滞ムードでずっと続きましたでしょう?それで生活環境が大きく変化しましたから、派手な遊びには縁が無くて慎ましく堅実な人が多いようです。しかし、この世代の女性は結婚後も働く人が多いので外での男と出逢いのチャンスは多いようです。ただ、この世代の女性は自立心が高いので男性に振り回されることは無いようです。北野さんの奥様は?」
「バブル崩壊後の世代ですけど、専業主婦です」
「そうですか。バブル後の女性が理想とする結婚ですね。きっと立派なご主人と結婚されて幸せなんでしょうね?」
最後のセリフはある意味皮肉にも聞こえる。
小野氏は私の質問に答えながら、私についてもさり気なく聞いてくる。話の振り方が上手いので、いつの間にか彼のペースで話題が展開していく。
「この店の美紀ママのバブル世代の女性なんですよね?」
男は美紀ママに同意を求めるように話しかける。
「ええ、あの頃は若い女性には素晴らしい時代でしたわ。あんな時代は二度と来ないでしょうね・・・」
「そうかもしれませんね。あの時代ほど女性がチヤホヤされた時代は、今の娘さん達は想像も出来ないでしょうね。その甘い蜜の味を今でも忘れられないんです。ちょっとした美人は常に数人の男達に傅かれて、王女様のように振る舞っていましたからねぇ、毎日高級外車でお迎えが来てレストランで食事をしてディスコで遊び、高級ホテルで気に入った男と過ごす。こんな生活ですから・・・。それが結婚した頃からバブルが弾けて暗黒の不況が始まって旦那の給料では地味な専業主婦を強いられることになりましたから、相当ストレスが鬱積していますよ。だから、何かの機会で旦那以外の男と出逢い、男がちょっとでもチヤホヤするとすぐに乗ってくるんです。それに、フリーセックスが最も盛んな時代ですから、あまり道徳とか倫理について意識をしないのです。ご存知と思いますが、〝ジュリアナ東京〟と云うディスコではほとんどストリップまがいの衣装で踊る女性が大勢いて、その派手さを競っていました。美紀ママもその一人かな?」
〝ジュリアナ東京〟はバブル風俗の象徴として今でもよくテレビで紹介されることがあるので、私もイメージとして知っている。

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