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日記番号:844

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幸治(都内)


  感想集

6章【仲間?】-1

急いでタオルと手拭を持って露天風呂に戻ると、陽子が入口の洗い場の簀子の上に寝かされていた。腰には手拭が掛けられていたが、その他は裸で額には手拭が置かれている。その陽子の傍には隣室の中年夫婦がいた。
女は手拭でパタパタと陽子を扇いでいた。男の方は膝の上に陽子の足を乗せていた。
「陽子!陽子!どうした?」
慌てて陽子の傍に行って叫ぶ。
「どうしたんですか?何があったんですか?」
私は気が動転して立て続けに中年夫婦に聞く。
「ああ、ご主人、奥さんが急に倒れて・・・、たぶん、湯あたりと思いますよ。頭を低くして静かに寝かせて置いたらすぐに良くなると思いますから・・・」
「陽子!陽子!」
私は陽子の頬を手で叩くと、陽子はぼんやりと目を開くが十分意識は戻らない。
2、3分後やっと私の顔を認識できた。
「あ、あぁ、あなた・・・、わたし、どうしたのかしら?」
キョロキョロと周りを見回す。
「ここ・・・、おふろ・・・」
その時、陽子がまだ全裸のままだったことに気が付き、慌ててバスタオルを掛ける。
「気が付きましたね?もう大丈夫でしょう。それじゃわし達はこれで失礼します」
中年カップルはそう言い残すと出て行った。私はまだ気持ちの余裕が無く、彼等にお礼も言っていなかった。
私たちは陽子の気分が回復するまでしばらくその場にいた。
その時間になるとさすがに秋風が冷たかった。
「僕が出て行ってから何かあったの?」
「えぇと・・・、そう・・・、幸治さんが出て行った後で・・・、あのご夫婦が始めちゃったの・・・。しかも・・・、私に見せるようなスタイルでよ・・・」
陽子はたどたどしく、ゆっくり話始める。しかし次第に、私が傍に来て安心したせいか顔色も意識もだいぶはっきりしてきたようだ。
「変なカップルだよね?本当に夫婦かなぁ・・・。本当の夫婦だとしたら2人共ド変態だよね?」
「でもね・・・、あの人たち、私たちも同じ仲間と思っているらしいわ。あのご主人、セックスしながら私に『奥さんは途中だったんでしょう?見たり見られたりすると女は燃えるよね?奥さんもそうでしょう?』とニヤニヤしながら話しかけるの」
「ふぅ~ん、そうだったの・・・。あの連中、きっと常習犯のようだね?『同じ趣味のカップルを探して遊んでいる』と、言っていただろう?僕たちもそう思われたかも・・・」
「いやぁねぇ、私たちそんなに変態に見えたのかしら?」
「それで、ヨーちゃんはどうしたの?」
「私、1人で居た堪れなくなって、恥ずかしかったけどその場を離れようとして立ち上がったの。その瞬間、目の前が真っ暗になって・・・、身体がファ~と浮いたように・・・、何だか夢の中にいるような・・・。まったくぼぉ~として・・・。遠くから幸治さんの声が聞こえて・・・、気が付いたら幸治さんがいたの。どうしてここで寝ていたのか初めは思い出さなかったわ」
「あのカップルがここまで運んできてくれたんだと思うよ」
「そうかも・・・、幸治さんが戻って来るまでどのくらいあったのかしら?」
「たぶん、4、5分もかからなかったと思うけど・・・」
「そうなの・・・、安心したわ。それくらいの間なら変なことされないもの・・・」
「そうだろうね。実際はもっと短い時間だからね」
「でも・・・、わたし・・・、全部見られちゃったかも・・・、あんな中年の変態メタボのオジサンに全部見られたなんて悔しいわ。幸治さん以外の男の人に見られるなんて・・・」
陽子はいかにも悔しそうな顔をして吐き捨てるように言った。
その後、私たちは部屋に戻った。

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