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日記番号:892

愛する妻を堕した男

志保の夫(首都圏)


  感想集

19.男物の下着

志保は時間通り改札口に現れた。
札幌駅で別れて2日経っていたが昨日のように感じたのは彼女の格好がデニムのショートパンツに長袖のチェックのシャッツとサマーセータ、それに例の大きなリュックサックを背負っていたからだ。
私の顔を見つけると嬉しそうに笑って手を振った。
とにかく大きなリュックを下ろさせて私が担いだ。思ったより重い。志保のような小柄の女子がよくこれを担いで広い北海道を旅してきたものと感心した。
ホテルに向かおうとすると、買い物があるのでデパートかショッピングモールに寄ってから行きたいと言う。東京のようなしゃれたモールはない。
小樽は大きな街ではないので駅前の大型スーパーに案内することにした。
志保が向かった先は女性衣料用品の階だ。
「明日、お母さまにお会いするのにちゃんとしたお洋服を持っていないの」
「そんなに気を遣うことはないよ。それに旅の途中なんだからさぁ。ほら札幌で出かける時の着たピンクのミニスカートと白いブラウスでも充分だと思うけどなぁ」
「だめよ!お母さまに失礼だわ。あのスカートが短すぎるの。だからもっと落ち着いた感じにしたいの」
志保は婦人服売り場を回り始めるが、しょせん田舎のスーパーである。なかなか気に入った物が見つからないようだ。結局、志保が選んだのは濃紺の膝丈のプリーツスカートと同色にカーデガンだった。
約3年間、東京に住んで女子学生のファッションを見慣れていた私には志保が選んだ衣類の組み合わせはあまりにも野暮ったい格好に思えた。いくら小樽が田舎でもこんな地味な格好をする若い女性は少ない。小樽は札幌から電車でわずか40分の距離だ。当然、ファッションも札幌と変わらない。さすがにスニーカーはパンプスにはき替えると言う。
志保にその事を言うと「いいの、これが私の気持ちなの」と、答えた。
その後、下着売り場に行き、ブラジャー、ショーツ、ミニスリップを買った。若い男が女性の下着売り場にいるのは恥ずかしかったが、志保は「浅井さんの好きな色を選んでほしい」と言うので、本音はライトブルーが好みだが、あえて白を選んだ。ショーツは刺繍が施された小さなハイレグだった。
志保の買い物はそれで終わらず、男性用の下着売り場に行き、今度は彼女が好みだと言うビキニブリーフを選んだ。それは志保が買った下着と同じ色だった。
「私、トランクスは嫌いなの。私の彼にはおしゃれなビキニを穿いてほしいの。これ素敵でしょう?」恥ずかしそうに言うが、それは既にパートナーの顔になっている。女性が男物の下着を買う時は特別な気持ちがすると言う。結婚して夫の下着を買った時、改めて結婚したことを実感するそうだ。
私はそれまでトランクス派だった。テニスのショートパンツの下にはサポータを穿くが、その締め付け感が嫌でもっぱらトランクスを愛用していたのだが、これから志保と会う時はブリーフにしよう。そう言えば野島も外国製とか言って極小の黒色のビキニブリーフを穿いていたのを見たことがある。志保はそれを知っているのだろうか?
買い物が終わると7時頃になっていた。
夕食の好みを聞くと、何でもいいと答える。近くに寿司屋街があると言うと、意外な返事が返ってきた。
「スーパーの食品売り場で何か美味しいお弁当を買ってホテルで一緒に食べたい。その方が、誰にも気遣いしなくて二人だけで過ごせるから」と言う。
確かにその方法もあると思う。志保も私と同じ気持ちで少しでも一緒にいる時間を長くしたいのだろう。
私たちは地下の売り場に行き、寿司の盛り合わせやカニ弁当、それにデザートのケーキや飲み物を買い込んでホテルに向かった。
ホテルまでは5分ぐらいで着いた。小樽運河を見下ろすロケーションで人気が高いホテル、しかもダブルの部屋は上階の角なので、窓から見える景色は抜群だ。
部屋に入った時、ダブルベッドに驚いたようだが、私の顔を見て照れくさそうに、その後Hな潤んだ目で私を見た。その意味が解ったのだろう。

《志保の告白》
とにかく、貴男に会いたかったの。陽子にはメクアメチャ言われたし、私も何かとても大事なものを置き忘れたような気持ちがあったから、そのまま東京に帰りたくなかったの。
お母さまのお見舞いのお話しは、私の両親を説得するためには効果的だったわ。実家の母は薄々気が付いたみたい。貴男の事も聞かれたから・・・。
ダブルベッドを見た時はやっぱり驚いたわ。女の子にとってダブルベッドは生々しくて、とても刺激的なのよ。

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