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日記番号:844

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幸治(都内)


  感想集

5章-2

幸いにも私たちがいる場所は一番奥で、しかも大きな岩の影になって入口側はからは直接見えない。しかし、陽子の喘ぎ声は露天風呂の外に聞こえたかもしれない。
最初に入って来たのは男で、「おぉ、けっこう冷えるなぁ」と言いながらジャブジャブと湯の中に入って来る。しかも、露天風呂に入って来たのは男だけでは無かった。すぐにもう1人が入って来た。今度は女の声がした。
「湯加減はどうですか?」
「少しぬるいかな?風が出てきたから肩を出すと少し寒いなぁ」
「奥の方が温かいわよ、でも誰かいるみたいですよ。手拭がありますから・・・」
(ヤバイ!こちらに来そうだ)そう思ってもどうしようもない。
バシャバシャとこちらに近づいて来る。
「やぁやぁ、どうもどうも、こんばんは・・・」私たちに気付いて男が挨拶する。
「はぁ、どうも・・・」取りあえず挨拶をお返しする。
すぐ後ろから連れらしい女も来た。
男はかなり太目の体格で身長はそれほど高く無い。頭の毛が薄いことはすぐに判った。連れの女は痩せ形で髪は茶髪が印象的だ。男は手拭を持たずにこちらに移動してきた。露天風呂なので珍しいことでは無い。
その男から私たち夫婦の羞恥心をえぐる言葉が出た。
「お楽しみの処をお邪魔しましてすいませんねぇ」
この男は私たちのセックスに気付いていたようだ。
「ここの温泉は〝子宝の湯〟と言われていますが、その他にも男も女もその気にさせる効能がありまして、別名〝淫蕩の湯〟簡単に言うと〝助平温泉〟とも言われているんですよ、はははは」
男は1人で勝手にぺらぺらと話し続ける。
「まぁ要するに、女の下半身を温めて血行を良くすることで女性ホルモンの分泌をよくするんでしょう。それで女の方が積極的になるんですよ。うちの奴もこの湯に浸かると、もうその後が大変なんですよ、はははは」
「アンタ、そんな恥ずかしいことを言わんといて!」
そして更に追い打ちを掛けるように話しかける。
「すいませんねぇ、先ほどはご迷惑かけて・・・、安眠妨害だったでしょう?何しろウチの奴は声が大きくて、はははは・・・」
「アンタ、そんな恥ずかしいこと言わんといて・・・、ごめんなさいね」
私はすぐにこのカップルが隣室の客と気が付いた。そして彼等もまた私たちが隣室の客と判っていた。

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