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日記番号:844

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幸治(都内)


  感想集

4章【奇妙な客】-1

私たちが最初に隣室の異変に気が付いたのは風呂に行こうと身支度を整えていた時だった。隣室の入口の引戸が開く音がして、何者かが訪れたようだ。その後、隣室から複数の人達の話し声が聞こえてきた。
陽子も不思議そうな顔をして私を見る。
(こんな夜中に、しかも不倫カップルの部屋を訪問する人がいるなんて・・・、もしかしたら、不倫カップルの本来の夫や妻が現場に踏み込んだ?)そう考えるのが普通だろう。
(これから修羅場が始まるかも・・・)
まったく赤の他人のドタバタ劇ほど面白いショーは無い。人は見知らぬ他人に対してまったく関心を持っていない振りをしているが、心の内側では誰もが持っている野次馬根性だ。
しかし、一向に大声や怒号は聞こえて来ないどころか、笑い声さえ混じる。
いったいこの4人はどんな関係の人達なのか?友人?友人としたらこんな深夜に部屋を訪れるのは非常識と思うが・・・。増々好奇心が増幅する。
私たちは風呂に行くことを止めて隣室の様子を窺うことにする。
再び壁に耳を当てて会話を聞いてその関係を探る。
陽子も相当に好奇心を刺激されたようで、私と一緒に壁に耳を当てる。
声の質の違いから、男が2人と女が2人とすぐに判明した。男の年齢は2人とも40代半ばから50代前半?女は最初にいた人が40代で、後から来た人は少し若くて30代?に聞こえた。しかし、会話の内容から肝心の4人の関係が見えて来ない。
話題の中心は最初から隣室にいた男で、もっぱらこれまでのセックス体験自慢だ。
もう1人の男はあまり話さないようで、2人の女は(まぁ、すごい)とか(すてきだわ)と、相槌を打ち、時々含み笑いをする。
会話の内容は次第に過激な言葉が混じるようになる。知っている言葉もあるし、その時初めて聞いた言葉もある。
男の口からは何度か〝相互鑑賞〟、〝オージープレー〟、〝サンピー〟と云った普段聞きなれない言葉が出たが、その中で多く出た言葉は〝ホームトーク〟だった。他の言葉は何処かで聞いたことがあるセックス用語と想像できたが、〝ホームトーク〟と云う初めて聞く言葉はまったく理解出来なかった。〝ホームトーク〟を直訳すると『家庭の会話』だが、その言葉にどんな意味が隠されているのか、その時点ではまったく理解できなかった。
ただ、話の内容から4人の関係が少し判った。
話している言葉遣いから、最初から隣室にいた男の本来の相手は後から来た若い女性で、無口な男の本来相手は最初に隣室にいた中年の女性らしい。それに女の一人は奥さんと呼ばれていたが、もう1人の女は名前で呼ばれていた。
会話が途切れたころ、突然、女の(あ、ああぁん)と淫声が聞こえた。その後、吐息が堪えきれずについ声となって出てしまったような遠慮がちな喘ぎ声に変わった。先ほど聞いた淫声より少しトーンが高いように思えた。若い方の女だと思った。
(はぁぁぁ・・・、あ、あっ・・・、はぁぁぁ、はずかしいぃわ、あぁぁそんなぁ・・)
陽子を見ると、目を閉じて聞いている。少し息遣いが荒くなっている。
(何も恥ずかしがることなんかないよ。オマンコがグチャグチャになっているぞ。オオツカさんのチンポで掻き回されたんだろう?)
(あぁぁぁ、そんなぁ・・・はずかしいことを・・・、やっぱり・・・いいわぁ)
若い女の淫声に誘発されたようにもう1人の女の淫声が重なる。それは間違いなく初めに聞いた女の声である。トーンが低く身体の内側から絞り出すように尾を引く。

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