メニュー ログイン

日記番号:582

私たちの消せない記憶

うげんこう(東京都西部)


  感想集

11 こわばった妻の顔

こわばった妻の顔は、なんだか他人の顔を見たような気分で、今までの穏やかな自分の嫁という感じでは有りませんでした。

男も相当ビックリしたのでしょう、抱えていた肩を離し、傘も妻からはずれ、雨は妻の頭や肩に落ちしぶいていました。
が、男はあわてて傘を妻の上にさしかけると、民謡を一緒に習っている尾辻と言いますと名乗り、今日は遅くなったものですから、と言いながら妻の背中を押して軒先に入れました。
私は一言も発することなくその男を見ましたが、年のころ50台半ばと思えるその男は「又改めまして」と一礼すると車に乗りそのまま発進しました。

前頁 目次 次頁