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日記番号:892

愛する妻を堕した男

志保の夫(首都圏)


  感想集

10.志保の秘密②

志保が野島に誘惑されたことは十分に想像された事だが、新入生部員の志保がどうのようにして危機を脱したのか、その方に興味があった。あの野島の魔手から本当に無傷で逃れることが出来たのだろうか?
私は急に不安になった。
もしかしたら、志保が未だ処女と思っているのは私の勝手な思い込みかもしれない。事実、私は彼女に直接聞いていないし、彼女から『未体験です』とも聞いていない。
「コンサートの帰りホテルのレストランかバーに誘われなかった?」
「えっ!どうして知っているんですか?」
志保は絶句した後、驚いて大きな声で言った。
「それは彼の常套手段で何人もの女子部員が犠牲になっているよ。特に志保ちゃんのような新入部員はこれまでも・・・」
「やっぱり・・・、本当なんですね・・・」
私はここで志保が処女かどうか見極めることにした。
「野島の奴はまずはホテルのプールに誘うんだ。その誘いにすぐに乗って来る子はバージンじゃないと判断するそうだ。彼は予め部屋をとっていて、その部屋で水着に着替えさせる。部屋まで行くのは危険だと知っていて、それでも誘いに応じるのは経験済と判断するそうだ。
逆にプールの誘いを断った子はバージンと判断して、その子の興味を引きそうなコンサートに誘って、その後にホテルのレストランかバーに誘う。新入生はホテルのバーに行った経験がないので、その雰囲気に酔って自分が大人になった気分になってしまう。そのまま部屋に誘うと成功率は高いそうだ。これで失敗したことはほとんど無いと、自慢していたよ」
「そんな・・・、そんな・・・ひどい・・・」
そう言ってしばらく放心したように口を開かなかった。
私はその様子を見て失望した。やっぱりこの子も・・・。
「先輩は疑っているんですね?私が野島さんに・・・」
私は志保の問いかけに答えなかった。その答えを出すのは志保本人だからだ。
私がその時別の事を考えていた。それは、志保が野島の餌食になっていた場合、それに対してどう答えるべきか・・・。つまりこれからの志保との距離をどう保つべきか?だった。
「浅井先輩、私・・・、野島さんとジャニーズのコンサートに行きました。確かに今言われたようにその後ホテルのバーにも行きました。でも・・・、でも、それ以上何もありません。先輩が想像しているような事は絶対にありません」
志保はほとんど泣きそうな、いや泣いていたかもしれないが、腹の中から絞り出すような口調で言い放った。
「さっき、良かったと言ったのは野島さんと何も無くて良かったと言いたかったの・・・。わたし・・・、わたし・・・、何も無くて浅井先輩の彼女になれて・・・、ほ・ん・と・う・に・よかった・・・」
最後は本当に泣いていた。
正直に言うとホッとしたが、その事実を確認する行為をしたのはもう少し後の事だった。

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