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日記番号:892

愛する妻を堕した男

志保の夫(首都圏)


  感想集

1.テールランプ

妻と、いや正確に言うと“妻たち”と赤羽のコンビニ駐車場で別れてから2時間が過ぎた。
今夜は何故か時間が経つのが異常なほど遅く感じる。あれから何度時計を見ただろう。さっきよりたった5分しか経っていない。僅か5分が1時間にも思える。

強迫感にも近い不安感が私の全身を覆う。何故か自分でも解らない暗く重い空気が私を包み、息苦しさを感じる。あの男が妻を車に乗せた後、運転席側のドアを閉める瞬間、私の顔を見て、ニヤリと口を曲げて冷笑されたように見えた。その情景を思い出すと全身が震える程緊張が走る。実際に、駐車場で二人を見送った後も数分間奥歯がカチカチと音を立てる程緊張していた。
男が運転する車は白のBMWカブリオレだった。ツーシータのスポーツカーに乗れるのは運転する男と妻の2人だけに限定される。妻がこのツーシータ車に乗った瞬間から夫の存在が消滅する。
あの男は私から最愛の志保を引き離して行く、もしかしたら、このまま・・・。
白いBMWのテールランプが見えなくなってもしばらくその場に立ちつくしていた。

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