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日記番号:844

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幸治(都内)


  感想集

1章【寝顔】-1

バタンと引戸の閉じる音に目を覚ました。
目を開けたがそこは暗黒の世界だった。
日常とは違う空間に一瞬、自分の存在を見失う。
睡眠の深度と意識の遊離は比例すると言われる。
目覚めたと言っても意識は混濁して夢幻と現実の区別がつかない。
暗闇の中で視線を移動すると襖の隙間からはわずかな明りが見えた。覚醒するに従い目が慣れると徐々に部屋の中が見えて来る。
視覚は急速に思考能力を回復させて現実を認識させる。
そして、自分のいる場所が温泉旅館の客室だったことに気付く。
聴覚は陽子が発する規則正しい寝息の音を捉え、触覚は腕の中に妻陽子の頭の重みを感じる。
働き始めた脳細胞が顔を動かすと、陽子の半開きになった口元から涎が流れているのが見えた。陽子の上半身が布団からはみ出し、裸の肩や腕が冷たくなっている。
あの後、2人共全裸で眠ってしまったようだ。
そっと布団を引き上げる。
久々の激しい夫婦交合だった。久々と言うより夫婦の営みとしてはこれまで経験したことが無い激しい交わりと同時に最高の快楽を享受したと言って過言では無い。

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