そして、何事も無かったように自宅に帰る。
何事も無かったように振舞う心の整理を、必死に考えながら深呼吸を繰り返す。
今日はこのところの就職探しでは、遅い帰宅だ。
「お帰りぃ・・、お疲れさん、遅かったね・・・」と、妻が心なしか私の顔を避けるようにキッチンで、片付けをしている素振りだ。が
綺麗に片付いているではないか・・・。
昼間の淫らな現場だったリビングが嘘のように整然となってる。
不思議と正視できない。
…床に、妻のタンクトップや、うす紫色の小さなパンティ、
友人のパンツや衣服が散らばっている光景・…が、オーバーラップしてしまう。
妻の顔も正視できない。
そして心臓の鼓動が激しくなる。
平常心を保とうと、必死で息を整えようとするが、辛くて洗面所に行って顔を洗い、うがいを何度もする。
リビングにもどり、家内から「パパにお風呂にいれてもらいなさい」といわれて、娘が嬉しそうに私に絡みつく。
「○○、先に入って待っててね」と言うと、素直に「ハーイ!」と、風呂場に向う。
いつもの事だ。家内が、いつも最後に風呂を使って浴室の掃除を終えて寝室に入る。
帰りの遅い友人は、夜入ることもあるが、朝のシャワーが多い。
風呂から上がった私の膝の上で娘が、テレビを見ているが、しばらくするといつものようにスーッと寝入ってしまう。
いつものとおりで、カワイイ娘を抱いて、私たちの寝室に連れて行く。
いつも、心を癒してくれる日課だ。が、今日は気持ちが荒んでる。
できるだけ、普通に振舞いながら、「フーーッ・・」とため息つきながら夕刊に目を通す。
同じ記事を何度も読むが、新聞の記事が頭に入らない。
食事する気力が無く「外で○○さんに相談がてら会って、夕食をご馳走になったからご飯はいいわ・・・・」と、嘘を言う。
私の先輩だ。ディーラー時代の先輩で度々、連絡をくれる。
「あら、○○さんって、いつも冗談ばかり言ってる○○さん?、・・・真剣に話聞いてくれた?」
「うん、相変わらず冗談ばかり言って、何とかなるよ・・だって、」・・・気が重い返事をする。
「明日、姉貴に呼ばれてて、実家で泊まるかも知れないから、夕食はいらないよ・・」
「あら、おネエさんから何かいい仕事の話でもあるのかしら・・・、お姉さん、顔広いもんね・・・」
「ちゃんと、頼むのよ、パパ・・・、」と、私に諭すように、優しく言う。
「ウン、姉貴はオレのこと未だに子供扱いするもんなぁ・・」と、人情味豊かな苦労人の姉貴と、コンビニチェーンの配送トラックに乗る義兄の顔を思い浮かべて苦笑が出てくる。
「じゃ、お姉さんにアレを持って行って。」といって、
妻は紙袋に入れたトートバッグを出してきた。
以前、家内が持ってるバッグを、姉が羨ましそうな顔して、気に入ったのを妻が覚えていた。
それからしばらく母や、姉や姉の主人の義兄の話をしながら缶ビールを空けて2本目に口をつけた途端、疲れのせいか、軽い頭痛を催す。
9時を過ぎていたから、「もう寝るわ、疲れたから先に寝るよ・・・」と私。
妻は、「うん、早く休んで・・・・、私も片付け終わったらもう寝るから・・・」妻も疲れているはずだ。
今日の、あの激しい友人との行為が、数時間前に繰り広げられた後だから・・・・
いつもと違う妻の雰囲気が、なんとなく艶かしい。
そして、今ごろ屈辱的な気持ちが妻の横顔をうかがいながら芽生えてくる。
そんなことも知らず、妻は鼻歌混じりにスーパーのレシートを広げて家計簿らしきものをつけてる。
「おやすみ・・・」
と、私は、一気に眼が醒めてしまった自分を偽るように、缶ビールを持って寝室へ向う。
妻が屈託無く「おやすみぃ・・」とやさしく言う。
倒れるように寝室の布団に転がる。
猛烈に疲れた。が、今日のことを思い浮かべながら、友人が帰ってきたとき、どんな素振りで妻と対処するのか、
何が何でも確認しなくては気が済まないのだ。














